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聖剣ですけど、ソコソコ元気です。

暑過ぎて、ついつい雨にしてしまいました。


うーん、きょうは雨か……ゆっくり寝てようかな?

そう思いながらベッドにうつ伏せた。


ところで軽やかな足音がして扉がバタンと開いた。

思わず目を向けた。


「惰眠は赦しません、何百年むさぼったと思ってるんですか? デイアイルさんのところに行ってきてください」

カスリダ神官が迫力満点で仁王立ちしていた。


わーん心臓らしきものが止まるかと思ったよ。

どS神官! 慈愛の神官様のアダ名が聞いてあきれるよ。


「ええ?雨降ってるし……嫌だよ」

だって、体調いまいちだしさ……グダグタと布団に埋まると掛け布団をはがされた。

「ギダシア神官がついていきます、邪神討伐祭りの打ち合わから」

カスリダ神官がまゆを釣り上げた。


ええ、ますますいやだよ。

なんでエロ神官とくっつけようとするのかな?

でも……


「……メンテナンスいってこいってこと? 」

よく見てるよ、本当に。

こういうところは尊敬する。

「はい、だるいんでしょう?」

カスリダ神官が微笑んだ。


はいはい、剣まで慈愛に包むわけね、どSだけど。


私は聖武具師が作った剣じゃない。

地母神オーラダー様を信仰している村の鍛冶職人が世界を平和にしたい強い心で製作して、オーラダー様に奉納した剣だ。


彼は沢山の大事な人を失っていたから。

大事な大事な家族を邪神の配下に奪われたから。


彼は普段、鎌や鍬、鍋なんかをつくる技術的には普通の鍛冶屋だった。


でも強い心がオーラダー様の心をとらえたんだ。

聖武具師があつらえてオーラダー様が祝福した聖盾を勇者は賜るはずだった。


あの楯の化身はどうなったんだろう?

強くて慈愛に満ち溢れたオーラダー様みたいな聖盾だった……


そんなことを考えてると本格的にカスリダ神官が起こしにかかったのでしかたなくベッドから出た。


きがえをして雨空を見上げた。

ああ、今日も一日頑張ろうと神殿の入り口で思った。


「ウエニアさん」

ギダシア神官のエロい声が耳元で聞こえた。

また、気配感じなかったよ。

「ギダシア神官、おはよう」

「行こうか? 」

後ろから抱きしめられた。

「大丈夫だよ」

うん、少しだるいけど、動けないほどじゃない。

「遠慮しないで」

わーん抱き上げられたよー。

なんでソンナニエロエロしいのさ。

「歩けるよ」

「雨だからムリしないで」

「いってらっしゃい。」

カスリダ神官がでてきて傘を私に持たせた。

「本当に歩けるよ、ギダシア神官」

「ウエニアさん、顔色が悪いよ」

ギダシア神官は聞き入れず歩き出した。


石畳をうつ雨の音……雨にけぶるキノウエシの町……

なんて、幻想的なんだろう?


古い古い街だって聞いた。

あそこの防衛壁の崩れて直されたあとは邪神の眷属が壊したんだってさ。


あの青い花は紫陽花だよね。

綺麗だな……雨の日もいいかも……

抱き上げられてなければね。


結局デイアイルさんの鍛冶屋まで下ろしてもらえなかったよ。


街の一角の小さな鍛冶屋さんにデイアイルさんは間借りしてる。


家主はお年寄り夫婦だから今はあんまりつくってないらしい。

目指せデイアイルさんを養子に計画中だって聞いたけど……いずれ帝都に帰るんだろうなぁ……


ニコニコとデイアイルさんが出てきた。

防火の作業服を来ている。


「カスリダさんから話は聞いてるぜ、すぐに見るぞ」

すぐ脱いでくれとどこかニヤつきながらデイアイルが私を見た。


デイアイルさん、それじゃ変態みたいですよ。

私、そんなにナイスバディじゃないですよ。


「デイアイルさん……」

低い声でギダシア神官が言った。

なんか寒けがしたよ。

「おっとギダシア神官様はでていってくんな、ウエニアちゃんは女の子だからな」

デイアイルさんがニヤリとした。

「……デイアイルさん、ウエニアさんはその通り女性だよ? オレだってまだ脱がせたことないのに脱がすの? 」

ギダシア神官が空恐ろしい笑顔浮かべて低い声を出した。


あんたに脱がされる筋合いは無いんだけどね。

わーますます寒けがするよ。


「おい服着たまま刀身が見られるかよ、うちの工房に女の子はいないし、それでもこいといったのはあな……お前だろ? まあ、帝都に未練はないけどよ」

デイアイルさんが慌てた。

なんか怯えてる?

「デイアイルさんが一番、腕のたつ聖武具師だからね、こんな、変態だとはおもわなかったよ」

ギダシア神官がニコニコわらった。

ああ、なんか凍りそうだよ。


デイアイルさんは優秀な聖武具師なんだ。

それなのにギダシア神官に言われてこんな辺境に来たんだってさ。


ギダシア神官っていまひとつ、正体がわからないな……

服装は一般神官でカスリダ神官の下だしね。

でも帝都への呼び出しはギダシア神官のみなんだよね。


カスリダ神官は帝都にいきたからないらしい。


なんかベビとマングースみたいな雰囲気な二人はほっといてさっさと直してもらおう。


「ウエニアちゃん、こっちだよ」

家主のランディおじいちゃんが衝立の影から手を振った。


好奇心旺盛な鍛冶屋さんだ。

聖武具師のわざにわくわくドキドキらしくキラキラした目で立ってる。

「向こうでいいの?」

刀身に戻れば…やっぱり恥ずかしいなぁ。

「ああ、すぐいくからな、ウエニアちゃん用の梱包布がおいてあるから脱いだらそれを巻いとけ」

デイアイルさんはギダシア神官から視線をはずせないらしい。


まさにマングースに睨まれた蛇みたいだね。

まあ、お言葉に甘えて行こうかな。

衝立の向こうは鍛冶の工房でランディおじいちゃんがケイティおばあちゃんに邪魔するんじゃないわよとひっぱられていった。


工房は火がいれられていて少し暑かった。

テーブルの脱衣かごに白い絹らしい布が入っていた。


帝都ってお金かかりそうだな剣の梱包まで絹なんだ。

そう思いながらシュルシュルする絹を触った。


「またせたな……おい、まだ、刀身じゃねぇのかよ、あいつに消されちまう」

デイアイルさんが疲れた顔で入ってきた。

「消される? 何を? 」

私は炉の火を眺めながらつぶやいた。

あの私を作った鍛冶屋さんの工房もこんなのだったのかなと思いながら

「……なんでもねぇよ、早く刀身に戻りやがれ」

デイアイルさんが防火エプロンをかけながら言った。


うん……もどるよ……

刀身に戻ると少し意識がうすくなるんだよね……




「お帰り、怖かったね」

私がふらふら居間にもどるとギダシア神官が私を抱き寄せた。

「お疲れ様」

ケイティおばあちゃんがお茶を入れてくれた。

ランディおじいちゃんがキラキラした目で私を見てる。

「おい、人を変質者みたいに言うのはよせ、お陰で嫁も来ないんだぞ」

デイアイルさんが疲れたと腰を叩きながら居間に入ってきた。

「自分の魅力のなさをこちらに押し付けるの? ウエニアさんは変態行為はされなかった?」

ギダシア神官が私を膝の上に乗せた。

「ギダシア神官の方が変態だと思う」

「ひどいな、俺はウエニアさんのことこんなに思ってるのに」

「おい、ラブラブしてないで聞きやがれ」

ギダシア神官に抱き込まれて耳元でエロボイス聞かされ続けられるんきついまからデイアイルさんありがとうございます。

「で、どうだったんだ? 」

「うーん、通常使う聖鋼鉄と違うもんでできてるからな、補った方は聖鋼鉄なんだが、作り直すわけにもいかないしな、まあ刀身補修はすんでるから、様子を見るしかないんじゃねぇか? 」

デイアイルさんがギダシア神官を真剣な眼差しで見た。

「ふーん、ウエニアさんの裸みたくせにどうにもできないんだ」

「おい、刀身しか見てねぇって言うの……ったくしつこい男だな、まあ、無理しなきゃ大丈夫だろ、祭りの打ち合わせは済んだんか? 」

デイアイルさんが頭をかいた。

「デイちゃんお行儀わるいよ」

「わしも聖武具師のわざみたいのう」

おばあちゃんはデイアイルさんのたくましい腕をペチペチたたいた。

おじいちゃんはお茶をすすりながらデイアイルさんをみてる。

わりぃなばあちゃんとデイアイルさんはどこか楽しそうだ。


帝都の家族と疎遠らしい。


「祭りなんてウエニアさんを直す口実だから適当にすればいいんだよ」

ギダシア神官が投げやりにお茶を飲んだ。


あの~私を直した大義名分なんですが?


「ひでぇ、この鬼畜やろうが、まあ定期的に見ていくしかねぇな」

デイアイルさんがニヤリとわらった。

「そうか、たのんだ、ウエニアさんの裸を見たのは許せない」

ギダシア神官が空恐ろしい笑みを浮かべた。


わーん、あの笑顔背筋が凍るよ。


「医者にかかったようなもんだから大丈夫だよ」

私はギダシア神官を見上げて愛想笑いを浮かべた。

事実必要以上にデイアイルさんさわんなかったし。

「じゃ、今度、オレにも見せてくれる? 」

ギダシア神官がエロボイスで耳元で囁いた。

「ギダシア神官は医者でも聖武具師でもないから嫌だよ〜」

わーん、このエロエロ神官め。

そうそうこの貧相な身体が見せられるかい。


キュぼんキュじゃなくボンキュボンなら少しは……わーんやっぱり無理〜。


「やっぱり……消すか? 」

ギダシア神官がデイアイルさんを怪しい目で見た。

「おい、こんな辺境くる聖武具師なんてなかなかいないぜ」

デイアイルさんが慌てた。

「……しかたない、引き続き頼む」

ギダシア神官が偉そうに命じた。


うん、たしかに命じたよ。

本当にギダシア神官って何モン?


「帰ろう、私、お腹すいた」

そういえばご飯もらってない。


もしかして、ご飯代節約?

本当の鬼畜はカスリダ神官だったのか?


「帰りに、なんか買い食いでもしようか? 」

ギダシア神官がそういいながら抱き上げそうになったので逃げた。


何がいいかな、魚コロッケがいいかな♪

それとも、キノウエシ焼きにしようかな?

キノウエシ焼きは薄皮の生地のなかにカスタードとブルーベリーのブリザーブが入ってて美味しいんだよね♪

キノウエシ焼きがいいな♪


ギダシア神官はセクハラするけどおごってくれるから好きさ。

もちろん親愛の好きだけどね。


そう言えば、傘が一つしかないなぁ。


「おとなしく抱かれなよ」

ギダシア神官が甘く微笑んで入り口で固まっていた私を抱きしめた。


なんかいちいちエロエロしい発言ですが。


「えーと、手をつなぐほうが楽しいよ」

うん、譲歩しよ、これでしっかり近づけば並んで傘に入れる大きさだし……私はギダシア神官を見上げた……身長高いなぁ。

「まったくおねだり上手だよね」

ギダシア神官が手をつないだ。


おねだり上手? したかな?


「おなかのよろしいことで、また調子が悪いようならすぐこいよ。」

デイアイルさんがホッとしたように手を振った。

俺がギダシア神官に殺される前に行きやがれ聞こえましたが……


たしかに迫力ある寒けがする笑みだったよね。


またおいでーとお年寄り二人にニコニコ手を振られて見送られて私はギダシア神官と歩きだした。


町の石畳はシトシト濡れて時々車が通る。

あの車、どうやって動いてるのかな?

なにも動物ついてないのに……時代の流れってすごいなぁ。


「やっぱり寝すぎた? 」

うん、今がわからないけど……いいか。

「そうだね寝ずにずっと一緒にいられれば良かったけど」

ギダシア神官が謎めいた微笑みを浮かべた。


え?ギダシア神官は現代の人だよね? 今の時代じゃなきゃ会えないって。


ずっと一緒ってま、まさかね……


「母ちゃん、モロコシとジャガイモだな」

串回し焼き屋ルートルードの扉が開いた。

少年が籠をもって飛び出してくる。

「ルー、傘さしていきな」

答える女性の声。

「うん…げ、聖剣ウエニア!なんでこんなところに! オレは手伝いするいい子だぞ!」

少年がたじろいだ。

「うん」

なんで怯えるの?

お手伝いできるイイコだよね。

「お前、オレの事忘れてるだろう? なんだって、最大の敵が大ボケ? 」

なんか、嘆いてるよ、少年。


最近、出来た評判の串回し焼き屋だよね。

そこの息子かなぁ……


「ルートシル君も忙しいみたいだから、行こうか? 」

ギダシア神官が私の肩を抱いた。


「ああ、オレは邪神ルートシルだよ! 好きにしやがれ! 」

少年が叫んだ。

「ルーまた邪神、ごっこかい? 早く買い物行きな」

中年の女性が顔をだして少年に傘を押し付けた。


「すみませんね、うちの子思い込みが激しくて」

女性は頭を下げた。

そんな年頃なんですよお気になさらずとギダシア神官が嘘くさい愛想笑い浮かべた。


ああ、邪神ゴッコかぁ

元気に育つように悪い名前つけるってあるもんね。


「本当なのに……いってくるよ」

少年はトボトボと八百屋の方へ消えていった。


「本当?」

うん、だって、邪神の顔も覚えてないなぁ。


多分思い込みだよね。

若い子がかかるというあの病気だよね。

死なないけど年取ると全力で悶えるっていうあのね……まあ、少年はいいや。


まだまだ、雨は続きそうだけど。

今はキノウエシ焼きの向かっていこう。


ギダシア神官、おごってくれるんだよね?

私、お金持ってないんだけど。


後で身体で返せって言われたら困るなぁ。

そうなったらギダシア神官の部屋の掃除でもするかぁ……

雨大好き何です。

惰眠をむさぼるのも好きです。

考え事も雨の日の方がはかどります。


読んでいただきありがとうございます。

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