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【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/222

第87話 S級ハンターの弟子(後編)

発売日から初めての日曜日となりました。

本日もたくさんの方にお買い上げいただいたかと思います。

是非是非書籍の感想などを聞かせていただければ幸いです。


まだ手に入れていないよ、と言う方は

下記、コードを書店員さんに見せてもらえると、スムーズに注文できます。


ISBN:978-4-8919-9714-4


よろしくお願いします。

「ええええええええええええええ!!」


 思わず素っ頓狂な声を出てしまった。


 ぼ、僕が母親代わりって……。


「ぼ、僕……、神獣なんて育てたこともないよ」


「奇遇だな。あたしにもない。ていうか、オールドブル広しといえど、神獣を育てたヤツなんかいないよ。良かったじゃないか。お前がその第一号の可能性は大いにあるぞ」


 シェリルは「二ヒヒヒ」と悪魔の笑みを浮かべながら、僕の髪をわしゃわしゃと撫でた。


「それにだ、ゼレット」


「親について行かず、今お前の胸の中にいるってことは、その子もお前は親だと認めている証拠なんじゃないのか?」


「そうなのかな?」


 僕は首を傾げつつ、神獣の赤ん坊を見つめた。


 随分と騒がしい声を上げていたにもかかわらず、相変わらず気持ち良さそうに眠っている。


 最初にも言ったと思うけど、実に幸せそうだった。


「腹を決めろ、ゼレット。あたしはあんたならその子を幸せにできると思う。それに成長すれば、強力な相棒になってくれるかもしれないぞ」


「え?」


「え? ――って、お前ハンターになりたいんじゃないのか?」


「え? なっていいの? 僕、ハンターに?」


「は? 別にお前がハンターになることに、あたしの許可が必要なんて言ってないよ。早すぎるとは言ったけどね」


 やばい……。


 ちょっと僕、今泣きそうなんだけど。


 シェリルはこういうけど、僕にはわかった。僕の保護者は僕がハンターになることを望んでいないって。


 多分、それは僕の思い過ごしでもなんでもなくて、きっと事実だったのだと思う。


 でも、シェリルは今自らその言葉を否定した。


 それはひとえに、僕を認めてくれたということだ。


「ありがとう、シェリル」


「お礼なんてされることはしてない。その子の保護者になるんだ。あんたも強くならなきゃって思っただけさ」


「うん。なるよ。僕……。最強のハンターに。勿論、シェリルよりも強く」


「はん! 勇ましいことこの上ないし。あたしなんかすぐに抜いてもらうぐらいじゃないとダメさ。なんせ『黒い暴風(ダークフォース)』のあたしが教えるんだからね」


「よろしくお願いします、師匠」


「ああ。あんたもしっかり保護者をするんだよ。そうすれば、相手は神の獣だ。何かとんでもない奇跡があるかもしれないかもね」


「とんでもない奇跡って?」


「さあて。それは自分で考えな。……ああ、そうだ。その前にあんたには考えることがあったね」


「何?」


「その年でボケてるのかい? それともまだ夢の中か? 名前だよ」


「名前?」


「その子の名前さ」


「あ――――。そっか」


 自分が名付け親――というか、神獣の赤ん坊の親代わりになるなんて思っても見なかったからすっかり忘れてた。


 いつまでも『しんじゅうのあかんぼう』じゃ、こっちも言いづらいもんね。


 出来れば、短かい方がいいかな。


「じゃあね。この子の名前は――――」



 ◆◇◆◇◆



 8年後……。



 俺たちはようやくカルネリア王国から国境を越えて、ヴァナハイア王国にある自分たちが住む街に帰ってきた。


 空は夕闇。


 暗くなる前に家路に着こうとしている人たちが足早に通りを歩いて行く。


 しばらく通りを進むと見慣れたエストローナに到着した。


「着いたぁ! 王宮の部屋も良かったけど、やっぱ自分の宿が一番ね。看板を見ると、なんかホッとしてきちゃった」


 向かいの大衆食堂の女将さんに預けていた鍵を回収し、パメラはエストローナの鍵を開く。


 まだ宿泊客は帰ってきてないようだ。


 おそらくパメラがいない間、夕飯がないためどこかで食事をとっているのだろう。


 俺はその様子を見ながら、カルネリア王国の長い道を歩いてきた神獣を労う。


「リル、ご苦労だったな。後でシャンプーしてやろう」


『わぁう!』


 リルは喜ぶ。


 ぴょんぴょんと飛び跳ねる姿は、旅の疲れを感じさせなかった。


「ししょー、それよりボク、お腹空いたよ~」


 と言ったのは、荷物持ちのプリムだ。


 さすがの赤耳族も疲れたらしい。


 ぐぅ、と大きな腹音を立てていた。


「あら?」


 突然、パメラは玄関に入ったところで立ち止まった。


 俺が覗き見ると、そこにはたくさんの木の実や果実が置かれている。


「おお! おいしそう!!」


 涎を垂らしたのは、プリムである。


「食べていい? 食べていい、ししょー??」


 目を輝かせる。


 そこにさらにリルまで加わり、大騒ぎになった。


「宿泊者さんのお土産かな。でも、随分と珍しいものが多いわね。これなんて仙桃って言われてるヤシャの実よ。すっごく甘くて、市場には滅多に出回らないって聞いたことがあるわ」


 パメラはヤシャの実を取り、しげしげと眺めた。


「時々あるのよね。こういうこと…………ん? ゼレット? どうしたの?」


「あ……。いや、なんでもない」


「?? ……でも、食べても大丈夫かしら」


「それは問題ないだろう」


「なんで、ゼレットにそれがわかるのよ」


「それはな」



 気まぐれな神様の贈り物だからだ。


リル編が終了です。ここまでお読みいただきありがとうございます。

次のお話から、一気に年が飛びます。ゼレットたちが帰還して3年後のお話になる予定ですので、

お楽しみに!


『300年山で暮らしてた引きこもり、魔獣を食べてたら魔獣の力を使えるようになり、怪我も病気もしなくなりました。僕が世界最強? ははっ! またまたご冗談を!』という作品が始まります。


『魔物を狩るな……』と同じく、『ゼロスキルの料理番』の発想が根底にあるお話です。


『ゼロスキルの料理番』にもあった食べると、能力値が上がるという設定を踏襲し、

主人公がバンバン魔獣を食べて強くなってくというお話になりますので、

気になる方は是非ともお読みいただけると嬉しいです(下記にリンクがございます)


新作、『魔物を狩るな』ともどもよろしくお願いします。

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