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【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第5章

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第76話 S級ハンター、正体を見抜く

後書きにて、キャラデザ公開させていただきました。

 被害にあったのは強盗だった。


 獣爪(じゅうそう)から見て間違いないらしい。シェリルが確認したので、間違いないみたいだ。


 僕は子どもながらホッとした。


 死んでしまったのは、悪い人だったからだ。


 それも街を震撼させていた強盗犯。


 魔物がまだうろついているのは怖いけど、これで1つ街の恐怖は取り除かれたことになる。


 シェリルにそのことを伝えると、返ってきたのはデコピンだった。


「痛って!! 何をするんだよ、シェリル」


「あたしは幸か不幸かお前の保護者だ。子どもが間違った考え方を持っていたら、それを正さなきゃならない。わかるか?」


「僕の何が間違っているのさ?」


 僕は現場となった宝石店の方を見る。


 店には衛兵が集まり、さらにそれを囲うように野次馬が集まっていた。


 割れたガラスケースや、強盗が壊したドアがひしゃげたまま生々しく残っている。


 現場へ向ける僕の視線を遮るようにシェリルは、人差し指を立てた。


「1つ。お前は大きな勘違いをしている。あいつは街を騒がせていた強盗じゃない」


「どういうこと?」


「街を騒がせていた強盗は、お前も知っているあの大狼だ。あいつは模倣犯だよ」


「え? あの大狼がなんで宝石強盗なんてするの?」


 すると、突然シェリルは僕の胸ぐらを掴んだ。


 終始機嫌の悪いシェリルはムッと僕を睨む。


 殴られる、と一瞬覚悟したが、結局鉄拳は飛んでこない。


 代わりに僕が首から提げていた護宝石(アミュレット)を取り上げた。


「あいつの目的はこれだよ?」


「……宝石? あっ! 魔石か?」


 街に数カ所ある宝石店には、装飾品も置いてあるけど、そのほとんどが僕がぶら下げているような護宝石(アミュレット)や魔石だ。


 魔石は自然物でありながら、『魔法(ルーン)』あるいは『戦技(スキル)』どちらかの効力を持つ鉱石だ。


 『魔法(ルーン)』や『戦技(スキル)』の効果を上昇させたり、あるいはその奇跡を閉じ込める力がある。


 2つの基本的な力があるということは、魔石自体にも魔力があって、物によっては人間10人分ぐらいの力を持つ石もある――そう本に書いてあった。


「なるほど。あの魔物はお腹が空いていんだね。だから、魔石の魔力を……」


 あれ? でもおかしいぞ。


 それならなんで魔物は、今まで人間を襲わなかったんだろうか。


 人間にも魔力がある。ピンキリだけど、魔石を摂取するよりは効率がいいはずだ。


 そもそもあれは魔物なんだろうか。僕は未だにあの魔物がなんていう名前かを知らない。


 それにこういうのも何だけど、あの魔物はとても美しかった。


「シェリル、あの大狼は本当に魔物なのかな?」


「…………。あたしから今はなんとも言えないね。ただ何かが起きているとしか言いようがない」


 シェリルは言葉を濁した。


 これはあくまで僕の勘だけど、シェリルは何かに気付いている。もしくは気付きかけている。


 何かというのは、もちろんあの大狼のことだ。


 きっと何か僕にはまだ聞かせたくないこともあるんだろう。


「ゼレット、お前にもう1つ言っておくことがある」


「え――――?」


 僕たちが口論する横を1人のお婆さんが、現場へと飛び込んでいく。


 すると、大きな声を上げて泣き喚き、強盗と思われる男の名前を叫んでいた。


「たとえ犯罪者だろうと、命を亡くせば悲しむ人間はいる。人が死んで、良かった(ヽヽヽヽ)ことなどないんだ。それだけは覚えておけ」


「……う、うん」


 シェリルの言葉は、子どもが理解するには難しいものだった。


 けれど、なんとなくわかる。


 それは僕にも経験があることだったからだ。


 どれだけ憎かろうと、いなくなってしまうと悲しいと思ってしまう。


 僕にはそんな体験があった。


「さて――――」


 シェリルは息を吐く。


 長い髪を揺らし、振り返った。


 憎々しげに目を向けた先にいたのは、ラクエルという魔物の飼い主だ。


「さあ、これであんたも犯罪者だ。飼い犬の責任は飼い主の責任なんてのは、子どもでもわかることだからな。しかし、それ以上にだ」


 シェリルはラクエルさんの胸ぐらを掴んだ。


 眼光の鋭さは、僕の時とは比べものにならない。獰猛な狼のようだった。


「ついにあいつは、人のおいしさを知ったぞ。人から魔力を摂取できるとわかってしまった。心の箍が外れてしまえば、何を起こすかわからないぞ」


「シェリル、それ以上はやめろ」


 同行していたガンゲルが間に入ったけど、シェリルは結局ラクエルさんを離さない。


 ラクエルさんも雪兎のように震えているだけで、何も言わなかった。


「あたしが知りたいのは1つだ。あれはただの魔物じゃないだろう? いや、魔物ですらない! 違うか?」


「おい! よせ、シェリル!!」


 詰め寄られてもラクエルさんは口を閉ざした。シェリルの剣幕に驚いているというわけじゃない。明確に意志を持って、魔物の正体を口にしようとしていないように僕には見えた。


「あたしにここまで詰められて、黙りとはいい度胸だ。だったらあんたの口が緩くなる呪文を教えてやろうか」


「じゅ、呪文??」


「おかしいとは思わないか。あんたの飼ってた魔物(ヽヽ)は、何故魔力を求める? 何故、人を襲った?」


「――――!」


 ラクエルさんの表情が変わった。


 「あっ」と眉宇を動かし、表情が固まる。ラクエルさんの反応を、シェリルは待っていたのだろう。


「今のでわかったよ。どうやら、あたしの勘は当たった。最悪な方向にね」


 シェリルはパッとラクエルさんから手を離す。


 ラクエルさんは乱れた襟元を直さずに、叱られた子どもみたいに項垂れた。


 それを見て、大きく息を吐いたのはガンゲルだ。忌々しげに舌打ちすると、シャリルを睨む。


 当の保護者は背筋を伸ばし、ラクエルさんを見下げた。


 わからないのは、僕だけだ。そもそも魔物の栄養は、魔力だ。魔物にとっての魔力は、僕たちが普段食べているご飯と一緒だという事実は、子どもでも知っている。


 そんな当たり前のことのどこに違和感があって、シェリルは何を確信したのだろう。


 シェリルは髪を掻き上げる。


「どうりで見たことのない魔物だと思ったよ。そりゃそうだ。あれは魔物じゃないんだからね」


「魔物じゃない? あんな大きな狼なのに?」


 じゃあ、一体……。


「あれは魔物じゃない。神獣だ。神獣アイスドウルフだよ」


 現場でお婆さんの泣き叫ぶ中、その声はどうしようもなくぶっきらぼうに聞こえた。


キャラデザ公開のご許可いただきました!

更新ごとに公開していこうと思います。

本日はゼレットです!


挿絵(By みてみん)


WEB版ではローブとしているのですが、

デザイン上、シャープさがなくなるためコートにしていただきました。

この点、書籍の方では修正させていただいております。


書籍版は6月15日発売です。


よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >> デザイン上、シャープさがなくなるためコートにしていただきました。 これじゃただのカッコいい黒いやつやんけ!作中でみんな目線からダサい黒いやつ扱いされなくちゃいかんやろ
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