第218話 元S級ハンター、古代兵器に提案する
来週1月20日の昼から新作を投稿します。
ジャンルは異世界ですが、料理ものになります。
この『魔物を狩るなと言われた最強ハンター』、『ゼロスキルの料理番』、『公爵家の料理番様』とはまた違った料理ものになっていますので、是非読んで下さい。
よろしくお願いします(''_'')の昼から新作を投稿します。
ジャンルは異世界ですが、料理ものになります。
この『魔物を狩るなと言われた最強ハンター』、『ゼロスキルの料理番』、『公爵家の料理番様』とはまた違った料理ものになっていますので、是非読んで下さい。
よろしくお願いします(*-ω人)
さて……。
啖呵を切ってみたが、旗色は悪い。
こうしている間も、キングコーンとスカイ・ボーンの戦いは、俺の操舵なしで続いている。キングコーンの修復はまだ時間がかかっているようだが、時間の問題だろう。
そして俺の方はというと、かなり分が悪い。エシャランド島で出会った魔族と同等、それ以上の持ち主であれば、苦戦は免れない。そもそもあの時は、地の利が俺に味方した。エシャランド火山の噴火がなかったら、死んでいたのは俺の方だったろう。
相手は俺の師匠シェリル・マタラ・ヴィンターを出し抜き、汚い手を使ったとはいえ勝利した相手だ。死を覚悟するぐらいの戦術が必要になるだろう。
すでにキングコーンにも、魔族にも勝利するハンティングプランはできている。
俺はチラッと横目でスカイ・ボーンの頭脳となったプリムを見つめる。すると、魔族は何かしら俺の企みに気づいたのかもしれない。攻撃の矛先を俺ではなく、プリムに向けられた。
「くそっ!」
思った通り、魔族はプリムに飛びかかる。プリムに向かって歯牙がかからんとするところで、俺は魔族を止めた。その後、執拗にプリムを狙ってくる。どうやらプリムとスカイ・ボーンが繋がっていることに気づいたらしい。
魔族の寿命は長く、その歴史は俺たち人類と変わらないと聞く。魔界と呼ばれる別世界の住人たちは度々俺たちが住む世界に干渉し、荒らしてきた。時に世界征服を目論み、魔王として君臨した魔族も存在する。身体能力もさることながら、独自の文化においても人間よりも優れたものを持っている。
もしかしたら、魔族は俺たち以上に古代の文明について詳しいのかもしれない。
「虫けら、虫けら、虫けら、虫けら、虫けら、虫けら!!」
今、古代文明と魔族の関係を考えても仕方ない。
闇雲に振るってくる魔族の拳は、重く、さらにその拳は鋼よりも硬い。1発1発確実に俺の体力と、剣を握る力を奪ってきた。剣は師匠仕込みだが、明らかに勇者のそれよりも速い。
防戦一方……。
勝利どころか、攻撃する活路すら見いだせない。
だが……。
(これでいい!!)
思った瞬間、ついに俺のガードが弾かれる。間髪を容れず、鳩尾に魔族の蹴りが入った。魔砲弾みたいに吹き飛ばされる俺はスカイ・ボーンの壁に叩きつけられる。助かった。土壁だったら今頃、外に放り出されたいたところだ。ただ幸運中の不幸か、肋が何本が折れていた。折れた骨の一部が肺に刺さったのかもしれない。口の中が一気に金属臭くなる。
魔族は吹き飛ばされた俺に目もくれない。こいつにとって、俺は身体にたかる蠅ぐらいなものなのだろう。まさに虫けらというわけだ。その手がプリムの首部分にかかろうとした時、スカイ・ボーンの身体は再び大きく傾く。突然のことで、魔族は踏ん張り切れず、スカイ・ボーンの中で転がる。
「ナイスだ、スカイ・ボーン」
「どういたしまして、マスター」
その瞬間、見逃す俺ではなかった。
【竜虎咆哮斬・炎】!
炎を伴った【炮剣】を魔族の頭に向かって振り下ろす。必殺の一撃。これで俺はこいつの同族と、Sランクの魔物を葬ってきた。
ガッ!
俺の剣が途中で止まる。
炎が噴き出す【炮剣】を魔族は易々と握っていた。Sランクの魔物を切り裂いてきた魔剣を、魔族は片手で受け止めたのだ。
その魔族と目が合う。
充血した赤い目を歪め、ニタリと笑った。
「虫けら……」
「それしか言えないのか?」
煽ると、魔族は俺の顎にもう一方の拳を打ち込んだ。強烈な衝撃に一瞬目の前が真っ暗になる。脳裏にいくつもの星が瞬いたような気がした。
さらに俺はシェリルの剣から手を離し、再びスカイ・ボーンの壁に叩きつけられる。その衝撃のおかげか、俺は意識を断たれる一歩手前で踏みとどまる。だが、視界は眩み、ほとんど何も見えない。それでも見える世界の中で、まるで黒いシミみたいに映る魔族の姿だけは、はっきりとわかった。
俺はなんとか立ち上がり、ファイティングポーズを取る。魔族はそんな俺を嘲笑い、さらに持っていた剣を眺めた。
「へへ……」
声を上げて笑うと、シェリルの剣をあっさりとへし折る。
【炎の鍛冶神】と謳われたバルグラムが鍛え、世界を救った勇者シェリルの形見。武器の中でも最硬度、何より自分の師の武器が壊された瞬間を見て、俺はシェリルが死んだ時のことを思い出す。
「貴様ぁぁぁあああああああああ!!」
視界も、勝利の道筋すらはっきりしない。
それでも身体だけは不思議と動いた。
真っ直ぐ魔族に向かって行き、拳を振るう。後から思えばひどいものだ。たとえ『魔法』を2つ持とうと、『戦技』と『魔法』を2つ使えても、魔族の前では役に立たない。
俺はハンター。
獲物を取るための武器がなければ、無力な人間。魔族の前では、俺もシエルも変わらないだろう。
事実、向かってくる俺を魔族は容赦なくいたぶる。ついには楽しくなってきたのかもしれない。手加減をしながら、俺の顔が腫れ上がるまで拳を打ち込み始める。防御をすればいいのだが、頭に血が上った俺はそれをすべて拒否した。
とにかくこいつには1発殴らなければ気が済まない。
「ぐっ!」
志は強くても、身体が言うことを効かなかった。当然だが、先に倒れたのは俺だった。
勝利を確信した魔族はついに俺に背を向ける。再びその全身凶器はプリムを壊そうと試行した。
「おい」
魔族が振り返った瞬間、その頬に渾身の一撃を打ち込む。雷の『魔法』が握られたその一撃は、魔族に多少ダメージを与えることに成功した。
「貴様……」
「なんだ。他の言葉も喋られるのか」
「殺す」
「無理だな」
「なんだと!?」
「愚かだな、お前たちは。最初から俺を狙い、殺しておけばいいものを……。まんまと引っかかりやがって」
「はあ?」
「周りをよく見ろ」
魔族は俺の言われるまま、周囲を見渡した。スカイ・ボーンの体内が金剛石をちりばめたみたいに光っている。さらに光は流れ、輝きを強めていった。
「これは魔力!!」
「ご明察だ」
「何をしている? そんなことをすれば死ぬぞ」
「ああ。死ぬんだ。お前も、キングコーンも、そして……」
スカイ・ボーンもな。
◆◇◆◇◆ 数時間前 ◆◇◆◇◆
「わかった。いいだろう。だが、1つ覚悟してほしいことがある」
「なんでしょうか?」
「俺からすれば、お前も魔物だということだ」
キングコーンも、スカイ・ボーンもいわば、古代の兵器。規模こそ違うが、遺跡にいたガーディアンとなんら変わらない。
「キングコーンを倒した瞬間、お前が世界の脅威になりかねない」
「それは……いえ。確かに今、第16世代の人工知能を持つ私ならあり得ないわけではないでしょう。わかりました。マスター、もしキングコーンを倒せた暁には、私も一緒に焼却してください」
「それには及ばない。はっきり言って、キングコーンと魔族を倒す方法として、一番確実な方法はこれしかないと思っていたからな」
「確実な方法? そんなものがあるのですか?」
その質問に俺は神妙な顔で答えた。
◆◇◆◇◆ 現在 ◆◇◆◇◆
「自爆だよ」
キングコーンに、スカイ・ボーンをぶつける。しかもスカイ・ボーンの魔力を限界値に引き上げた状態でだ。最初に爆雷でキングコーンの黒い霧を吹き飛ばしたように、スカイ・ボーンを1個の爆弾と見立てて、特攻するのである。
俺はスカイ・ボーンに共闘を申し込まれた時、すぐにこの方法を思い付いた。だが、スカイ・ボーンはこの方法に1度も辿り着かなかったという。何故ならスカイ・ボーンに自爆するという命令はなかったからだ。おそらくスカイ・ボーンが単独兵器だったことも要因としてはあるのだろう。
そして、スカイ・ボーンは決断した。
自分をキングコーンにぶつける決断を……。
「俺がお前とダラダラ戦っていたのは、お前の注意を俺に向けることと、自爆を企んでいることを悟らせないためだ」
魔族は気付き、脱出を試みようとするが、もう遅い。
スカイ・ボーンの鼻先には、すでにキングコーンが立っていた。
「プリム!」
「あい!!」
スカイ・ボーンから開放されたプリムが俺を抱えて、その身体から脱出する。エストローナの屋上よりも高度から飛び出した俺は、スカイ・ボーンの最後の雄姿を見守った。
「さらばだ」
次の瞬間、巨大な爆発が起こると、俺はプリムと一緒に爆風に巻き込まれる。爆炎が空まで上がるのを見届けるのだった。







