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【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第8章 スライムの島編

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186/222

第184話 元S級ハンター、思い出す

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日、ピッコマにて最新話が更新されました。

いよいよあの食材の調理が始まります。

垂涎の出来なので、是非ご賞味下さい。


また2月24日には、コミックス第4巻が発売予定です。

ご予約よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

 瞬間、身体が軽くなる。

 俺はハッと後ろを振り返った。

 シエルを見ると、だいぶ顔色が良くなっていた。

 薬の効果というよりは、ボンズの『戦技(スキル)』の効果が切れたのだろう。

 どんなに万能な『戦技(スキル)』や『魔法(ルーン)』も、使い手が意識を無くしたり、死んだりすれば持続することはできない。


 ただボンズの場合、『戦技(スキル)』の性質上、能力で作った毒かそうでないのか、見分けるのは難しい。あらかじめ薬をもらう駆け引きを行なったのも、意識を失ってからでは時間がかかるからだ。


「プリム、ボンズを縛り上げろ。慎重にな」


 といっても、プリムに毒は効かない。

 こいつの身体の頑丈さは、俺がよく知ってる。

 流石のボンズもプリムのような相手ではどうしようもないだろう。


 プリムがそろりとボンズに近づく。

 最初に反応したのは、リルだ。

 その様子を見て、ただならぬ気配に気づく。

 俺は咄嗟にリルの背に乗ったシエルを庇う。

 次の瞬間、梢の揺れる音を聞くと、さっと目の前を影が通り過ぎていった。


 次に目視できた時、俺たちは見覚えある猩猩族が木にぶら下がっていることに気づく。小脇には意識を失ったボンズの姿があった。


「あいつ、見たことあるよ、師匠」


「ああ。ヤム一派のものだな」


 忘れていたわけではなかったが、シエルが助かって、その間隙を突かれたのは否めない。


(いかんな。やや幸せボケしているかもしれない)


 ルカイニの一件で、ブランクは取り戻せたと思っていたが、どうもまだ本調子というわけではないようだ。

 それに頭がぼんやりする。

 毒に対する耐性こそあるつもりだが、ゼロというわけじゃない。


(嫌な予感がする……)


 今はもう警戒も油断もしていない。

 目の前の敵も強敵というわけではない。

 万全の俺じゃなくとも、プリムとリルに当たらせれば勝率は10割に近い。


(何か見落としている気がしてならない)


 それはエシャランド島に来てから、感じていた。

 最初は小さなものだったが、それは次第に大きくなっていた。

 どこからかはっきりしないが、俺の不安は決定的に膨れ上がって来たことは確かだ。


「師匠! あいつ、捕まえていい?」


「待て。プリム」


「んにゃ?」


「リルもその場を動くな」


『バァウ?』


「何か嫌な予感がする。久しく感じていなかったこの感じ」


 悪寒のようなものがする。


 がさりと背後の茂みが動く。

 やってきたのは、ヤムだ。

 後ろには部下のドワーフも控えている。

 こっちを睨んで、いずれも殺気立っていた。


「見つけましたよ、ゼレットさん。よくもうちのアジトをめちゃくちゃにしてくれましたね」


「覚悟しろよ、ゼレット・ヴィンター」


「さあ、スライムをこちらに」


 ヤムが手を差し出す。

 俺は動かなかった。

 ただじっとヤムの細い指を見つめる。

 やや伸びた爪は、ネイルの色もあってか、凶器めいた印象を受ける。

 それでもヤムに至っては、危険な気配は微塵も感じない。


「どうしました、エシャラスライムをこちらに」


「お前たち、ここに来るまで誰かに合わなかったか?」


「はあ? 何を言ってますの?」


「答えろ」


「…………時間稼ぎのつもり?」


 ヤムは目を細め、俺の方を向いて訝しむ。


 やはりこいつではない。


 直後、地面が震える。

 同時に空気が軋む。

 火山性の振動に、ヤムたちも驚いていた。


「姐さん、さっきから地震がすごいよ」


「言われなくてもわかってるわよ。本当に噴火するかもしれないわね」


「おでたち、ここにいるのは危険なんじゃ……」


「そうだね。あんたたち、とっととエシャラスライムを奪うんだよ」


 ヤムの命令で、猩猩族とドワーフが動く。

 すると、2人の足が止まった。


「なんだ、お前?」


「ロージ、知り合い?」


 特大の殺気が側をすり抜けていく。

 背後を振り返り、その姿を見た直後、俺は叫んだ。


「逃げろ!!」


 プリムと、リルは素直に動いた。

 特にリルの反応がいい。すぐさま背に乗ったシエルとともに、安全圏まで退避する。

 逆に反応がまずかったのは、猩猩族とドワーフだ。


 突然現れたそれ(ヽヽ)の姿と、ただヤバさに気づいてないらしい。


「お前、なんだ?」


「やめろ! 離れろ!!」


 俺は叫んだが、次の瞬間猩猩族は吹き飛ばされていた。

 体重100キロ以上もありそうな猩猩族が、木を超え、森の上に広がる空へと消えていく。


「な、なんだ?」


「近づくな! そいつは化け物だ。お前らなんて相手にならないほどのな」


「ゼレットさん、あれは一体……」


「あれは……」


 こっちで会話を進める中、それ(ヽヽ)は悠然と動き、側にあったエシャラスライムを拾い上げる。

 エシャラスライムはただじっと見ていたわけではない。

 大きく口をあけると、それ(ヽヽ)を飲み込もうとする。

 だが、それ(ヽヽ)は意に解さない。

 そっと両手を使って、エシャラスライムを眺めている。


 それ(ヽヽ)を一言で表すとすれば、「異様」の一言に尽きる。


 黒い肌に、血を刺したような赤い瞳。

 全体的に逞しい身体から伸びていたのは、しなやかな鋼のような尻尾と、翼――そして頭から伸びる山羊のような角だった。


(全く……。どうやら俺は今の今まで平和ボケしていたらしい。なんで今まで考えなかった。あいつらの目的は、俺がよく知ってるじゃないか?)


 俺が子育てに勤しんでいる間も、決して奴らの動向から目を離さなかったわけではない。ラフィナを通じて、常にその情報がないか、送られてくる書類全てに目を通してきた。


 幸運にも奴らはこの3年ずっと息を潜めていたようだ。


 そして、今俺の前に現れた。

 Sランクの魔物を抱えて。


 それまで漠然と抱えていた不安が一気に吹き飛ぶ。

 周りがその異形の存在を見て、鼻白む中で、俺だけがその再会を喜んでいた。


「よう。久しぶりだな」



 魔族……。



 そして俺は【砲剣】を構えるのだった。


同月発売!


『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』第7巻は、2月8日に発売です。こちらもよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔族ですか…ゼレットのいわゆる『本能』が接近を察知してた→マジヤバスな存在なんでしょうね。 [一言] ちょっと遅れましたが明けましておめでとうございます、今年も宜しくお願い致します。
感想一覧
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