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【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第6章

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115/222

第115話 元S級ハンター、酒がほしくなる

☆☆ 告知 ☆☆

本日、拙作『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』2巻が発売されました。

元死属性四天王が「勇者」に選ばれる!? かなりカオスな内容となっておりますので、

是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 オリヴィアはやや興奮気味に今回の食材を紹介した。


 ドラゴンキメラの白子か。


 お子様体型のオリヴィアはわかっているのだろうか。


 白子ってどういうものなのか。


 俺は半目で3年経っても小人族の呪縛にかかったままのオリヴィアを見つめる。


「な、なんですか、ゼレットさん!!」


「いや、別になんでもない」


「今なんかわたしのことを馬鹿にしたでしょ。実は白子が何なのか知らないとか」


 意外と鋭いんだな、オリヴィアは。


「これでも料理ギルドの受付嬢ですよ。知らないわけがないでしょ」


「オリヴィア、しらこって何?」


 すかさず突っ込んだのはシエルだった。


 あのギルドマスターを怯ませ、退散せしめるに至った純粋な眼が今度はオリヴィアに襲いかかる。


 当然、オリヴィアは固まった。


 そしてみるみる顔を赤くしていく。


 動力が切れた撥条人形のようにぎこちない動きで、オリヴィアはそれでも質問に答えようとした。


「え~~~~~~~~~~~~と……。白子というのはつまり、その……」


 その間、シエルはじっとオリヴィアを見つめている。


「だから、そのお父さんの大事なところというか」


「大事なところって?」


「ええ……。それは――――――ああああああああああああ!!」


 再びオリヴィアは走り出す。


 ギルドマスター同様、小川に飛び込む。


 さすがは人魚の血が入っているというだけあって、服を着ていてもなかなかの泳ぎだ。


 2人とも今日肌寒いのに、随分と元気だな。


「パパ? パパの大事なところって何?」


 シエルは矛先を向ける。


「それはまたシエルがお利口さんにしてたら教えてあげよう」


「ホント?」


「ああ。今はそうだな。あんな風にぷよぷよして柔らかい食べ物だと思っていればいい」


 俺は指差す。


 プリムがテーブルの上のドラゴンキメラの白子を突いている。


 見ただけでわかる弾力と張り。


 テカり方も新鮮でおいしそうだ。


 とても5日前に討伐したものとは思えない。


 この3年間で、魔物の保存技術も随分アップしたのだろう。


「問題は、これをどうするかねぇ」


 首を捻ったのは、パメラだ。


 すでに手には包丁が握られている。


 久しぶりの魔物料理だ。腕が鳴るといったところだろう。


「しかし、雄だったのが残念でした。雌なら卵を持っている可能性もあったので」


 ラフィナは軽く肩を落とす。


「確かにねぇ。でも、白子も卵に負けないぐらいおいしい食材よ。珍味だけど」


「わたくしも初めてです。では、存分にその珍味を味わいましょうか」


 幸いオリヴィアとギルドマスターが先乗りして、準備は出来上がっていた。


 白子は珍味だが色んな食べ方できる。


 それに今回は白子だけじゃない。ドラゴンキメラには色々な部位が入っている。胸肉や、白子と同じく内臓なども入っていて、これはなかなか楽しめそうだ。


 対して、パメラが何を作るか楽しみだな。


「ゼレットは火の管理をお願いね」


「わたくしも手伝いますわ」


 ずいっとラフィナが前に出てきて、腕を捲る。


 俺とパメラは氷像のように固まった。


 昔とある集まりがあって、その時ラフィナの手料理を食べさせてもらったのだが……。


 読んで字のごとく、筆舌に尽くしがたいものであった。


 それからというもの、遠慮してもらっている。


「それで何を作るんだ、パメラ」


「こんなにでかい白子だからねぇ」


 そう。とにかくドラゴンキメラの白子はでかい。


 こういうと卑猥に聞こえるかもしれないが、抱えても手が回らないほどだ。


 しかも、多分これだけではないはず。


 ここにある分量は、ハントした食材提供者のものだからだ。


「まずはやっぱり、生で食べたいわよね」


 思わず俺は頷く。


 魔物とはいえ、貴重な白子だ。


 それを生で味わえないというのは、まさしく生殺しにひとしい。


 パメラはスプーンでぷるぷるの白子をそぎ取る。


 器に盛り、調味料と数種類の薬味を入れ、最後に柑橘系の果汁を垂らした。


「完成。ドラゴンキメラの白子の檸檬醤油漬け」


 出た。定番中の定番である。


 俺も、そしてプリムやリルも色めき立つ。


 真っ白な光沢のあるドラゴンキメラの白子に、飴色の醤油と、すり下ろした大根と新鮮そうな葱。さらに細切りにした玉葱がかかっていた。


 彩り鮮やかな薬味が、さらにドラゴンキメラの白子を際立たせている。


 器を鼻先に寄せると、つんと柑橘系の匂いが鼻腔を衝いた。


 さて味は……。


 たっぷりと薬味を付けて、こぼれないように一気に口に入れる。


 ドロッと動く姿はまさしく白子だ。


「うっっっっっっっっまっっっっっっ!!」


 まろやか……。


 舌ざわりが半端ない。


 口に入れた瞬間、濃厚なクリームのような味わいが舌に絡み、儚く消えていく。


 深いコクと旨みが良い。かすかにピリッと舌を刺激するのは、ドラゴンキメラと合成されたガルーダの肉の特性だろうか。これならば、醤油だけでもいいかもしれない。


 濃厚な旨みのクリーム。それが薬味を挟んだ時の食感も申し分なかった。


「どう?」


「おいしい!」

『ワァウ!』


 プリムもリルも大絶賛だ。


 これほどの濃厚な旨みは初めてだろう。


 かくいう俺も初体験だ。


「ゼレットは?」


 パメラは尋ねる。


「酒が欲しくなるな」


「なるほどね。なら、しばらくそれを突いてて。次の料理を作るから」


 パメラはフライパンを肩に乗せる。


「ママ! シエルもたべたい!!」


 シエルがパメラの足にすがりついて、懇願する。


 パメラはしゃがんでシエルと目線を同じくすると、1度頭を撫でた。


「ごめんね。シエルにはまだ生は早いかもだから」


「ええ~。シエルも食べたいよ~!」


 地団駄を踏んで、さらに駄々をこねる。


 自分の子どもながら、駄々をこねてもシエルはかわいい。


「師匠、鼻血で出てるよ」

『ワァウ!』


 パメラの説得は続く。


ポンポン(おなかが)痛くなっちゃうよ。その代わり、この料理以上においしいのを作って上げるから」


「おいしい料理……?」


「うん……。シエルの大好きな――――」



 パスタ料理よ!



 その瞬間、シエルの目が輝くのだった。


☆☆ 来年1月発売 ☆☆

『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~』の続刊とコミックス1巻が、来年発売されます。

こちらで告知いたしますので、是非お買い上げ下さい。

よろしくお願いします。

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