表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック発売中】魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~  作者: 延野正行
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/222

第109話 元S級ハンター、男を語る

☆☆コミカライズ更新☆☆

ニコニコ漫画の方でも更新されました。

そちらも是非チェックして下さい。


挿絵(By みてみん)

 ギィン!!


 乾いた音が鳴り響く。


 その瞬間、見えたのは砕け散るエスカリボルグだった。


「あ――――」


 ヴィッキーの顔が歪む。


 しかし悲嘆に暮れる時間は残されていなかった。次の瞬間には、ドラゴンキメラがヴィッキーに突っ込んできたからだ。


 はじき返されたのは、ヴィッキーの方だった。


 紙を丸めただけの球のように、高々と空に打ち上げられる。


「ヴィッキー!!」


 かろうじて回避に成功した俺は、ライバルの名前を見ていた。


 すぐに落下点へと走り出す。


 かなり遠くまで飛んでいる。


 間に合うか……。いや、間に合わない。


 俺は【砲剣】の砲口を下へと向ける。


 【炸裂弾(バーストブリッド)】!


 地面が吹き飛ぶ。その爆風に乗って、飛んだ俺は落下し始めたヴィッキーをなんとか受け止めた。


「ぬっ!」


 思わず顔を歪めたが、すぐに平静を取り戻し、ひとまず空を縦横無尽に飛び回るドラゴンキメラの視界から隠れる。


 木陰の下に隠れたが、さほど時間はない。


 ドラゴンキメラの炎のおかげで、森に火が付き始めたからだ。


「ヴィッキー、しっかりしろ」


「ん……。うぅ…………」


 さすがはドワーフ族といったところか。


 規格外の地竜の突進を受けて、意識があることに驚く。さすがに複数箇所で骨折してるようだが、大事にまでは至っていなかった。


 今は脳震盪を起こして、意識がはっきりしていないというところだろう。


 とはいえ、放置しておくわけにもいかない。


 回復薬を飲ませたが、薬の効果が表れるのには時間がかかる。その時間、上で飛び回っているドラゴンキメラが逃してくれるとは思わない。


 基本的に竜種は執念深い生き物だ。


 俺たちを血祭りに上げるまでは、何度だって襲いかかってくるだろう。


「ゼレット……」


「気が付いたか、ヴィッキー」


「あたいはもうダメだ……。お前だけでも…………うっ!!」


「随分と殊勝なことを言うんだな。……『あたいを連れて逃げろ』とでも言うかとおもっていたが」


「あ、あたいを馬鹿に…………うっ! くそ!! まさかあたいが……あたいのエスカリボルグが潰れるなんて……」


 ヴィッキーは倒れたまま、悔しそうに地面を叩いた。


 目には涙が滲んでいるように見える。


 自慢の武器と、その力で負けたのだ。さぞかし無念だろう。


 そもそもヴィッキーにとって、怪力はアイデンティティーの1つだ。


 だが、競り負けた。悔しさも一入なはずである。


『壊し屋』と呼ばれる彼女の目に、涙が滲むのもわかる。


「落ち込むな。今回はお前の得物が悪かった」


「エスカリボルグのせいにしたくない」


 ぷいっとヴィッキーは顔を背ける。


「ゼレット……」


「なんだ?」


「お前だけでも逃げろ」


「はっ?」


「お前だってわかってるだろ。ここらが潮時だって……」


「潮時か……」


 ヴィッキーは大怪我。その武器も壊れた。俺も万全の状態とはいえず、装備も十分とは言えない。


「撤退か。判断として悪くない」


「ドラゴンキメラを倒すには、対策が必要だ。お前が1度ギルドに持ち帰って、考えてくれ。人数を増やせば……」


「お前はどうする?」


「あたいはそうだな……」


 そう言いながら、ヴィッキーはおもむろに立ち上がる。全身の骨が折れたり、ヒビが入ったりしているのにだ。


 回復薬の鎮静効果も一役買っていても、普通の人間では起き上がれない。


 ドワーフ族の体力と、ヴィッキーの驚異的な身体能力が成せる技だろう。


「あたいは、お前が逃げる時間を稼ぐ」


「その身体でか?」


「あたいは確かにゼレット――お前を追って、食材提供者になった。けどな。今でもハンターとしての矜恃は捨ててない」


 そう言って、ヴィッキーはドンと自分の胸を叩く。


「ハンターは魔獣の駆除を目的とする。そして、何よりも依頼人と魔獣に困ってる人間の命を優先させるのが仕事だ。あたいがハンターとしての矜恃を捨てない限り、あたいはあんたを守るよ!」


 俺を守る……か。


 ふん。随分と大きく出たな。未だに討伐数では俺の足元にすら及ばないくせに……。


 3年もの間、ただただ俺に対する逆襲のチャンスを窺っていたわけではなさそうだな。


「男子、3日会わざれば刮目してみよ、か」


「あ? 何言ってんだよ。あたいは女だ」


「こっちの話だ。しかし、お前の有り難い提案だがな。却下する」


「はっっっっ?? なんで? このあたいが殿(しんがり)を務めるって言ってるんだぞ! お前は逃げろ!」


「断る……」


 俺は木陰からそっと顔を出す。


 依然として、ドラゴンキメラは赤い炎を噴き出しながら、森の上を旋回している。


「何故だよ!? あたいが心配だとか! 舐めるなよ、ゼレット! あたいだって、元ハンターだ! 覚悟はできてる」


「別に舐めてなんかいない。そもそもな、ヴィッキー。俺とお前では、ここに来た目的が違う」


「目的? そういや、お前……。ドラゴンキメラのことを知らなかったよな。どうして、森なんかにいたんだ?」


「ピクニックだ……」


「はっ?」


 ヴィッキーの目が点になる。


 一方、俺は拳を握りしめて、熱弁した。


「シエル……子どもとピクニックに行く予定なんだ。この森にな」


「はっ?」


「シエルの安全確保のためにも、ドラゴンキメラは絶対に倒さなければならない。それにな、あいつめ! 森に火を放ちやがった! これで森を全焼ということになって、ピクニックに行けなかったら、シエルがどれだけ悲しむか!」



 許さん!!



 俺は拳を振り上げ、言い切った。


「えっと……。それだけ?」


 何故か真っ白になってるヴィッキーが質問する。


 ん? それ以外にあるか?


 まあ、だが……強いて言うなら……。


「それにな。女を見捨てて、逃げたら妻にもシエルにも怒られる。そんな後ろ指を差されるような父にはなりたくない」


「ゼレット……」


「もっと言うならな、ヴィッキー」



 お洒落じゃない!



「女を捨ててなんて逃げるのは、ダサい男がやることだ。それともお前は、俺にダサい男になれというのか?」


「…………相変わらずだな、ゼレット。ハンターの時と何も変わってない」


「環境こそ変わったが、俺は俺だ」


「すまない。お前の矜恃を傷付けたかもな。だけど、どうするんだよ。もうあたいもお前も、まともな武器が残ってないんだよ」


「武器なら残ってる。魔獣どもにはない武器がな」


 俺は自分の頭を指差したあと、ヴィッキーに刺さったエスカリボルグの破片を拾い上げた。


☆☆コミカライズ更新☆☆

ニコニコ漫画の方でも最新話が更新されました。

そちらも是非チェックお願いします。

そしてお気に入り登録者が、3万件を突破しました!

登録いただいた方ありがとうございます。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス10巻 11月14日発売!
90万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~

コミカライズ9巻1月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる⑨』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第5巻が10月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本5巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本2巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月25日!ブレイブ文庫様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large






好評発売中! 全編書き下ろしですよ~。
↓※タイトルをクリックすると、カドカワBOOKS公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる2』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ