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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第六章 全て、無駄です
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抹殺指令

 居心地が悪いな、と思う。

 広い部屋の中に、数十人の警察官が座っている。

 暗い部屋の中、大型スクリーンに光が投射されている。


「これは昨日確認された情報だ」


 本部長が説明を始める。

 何事だろう。皆、戸惑うようにそれを見ている。

 そして、私はスクリーンに動画が流れた瞬間思わず呟いていた。


「げっ……」


 その映像では、人混みの中で、ナイフを子供の首に突きつけた男に女性がスマートフォン片手に近づいていっている。

 ナイフが子供の首から離れる。

 その瞬間、背後からダガーナイフが投じられ、見事にナイフを持った手を貫いていた。

 特務隊の皆の視線がこちらに向く。


「画面見て、画面」


 私は小声で、戒めるように言う。

 その瞬間、映像の中ではエミリーが男の顎に肘打ちをしていた。

 そして、彼女は振り返り、スマートフォンのカメラに顔が映る。


 そこで、動画は止まった。


「彼女は、エミリー・高塚。日系アメリカ人で、仕事は暗殺を主にしている」


 私は絶句した。

 暗殺者と、一日一緒だったのか。


(まあ、人のことを言えた義理じゃないか)


 そう、心の中で呟く。


「彼女が日本に来ている。目標は不明だが、皆警戒してほしい」


 私は手を上げた。

 本部長は、私を指差す。


「どうした? なにか支障でもあったか?」


「この人とたまたま一緒にいたんですけどね。仕事はこの市で行うって言ってましたよ」


 ざわめきが起こる。


「それ以上の情報は?」


「口を滑らせませんでした。なにぶん、相手は日本語を覚えていなかったので」


「警戒態勢が必要だな……」


 手が上がった。見ると、楓が立ち上がって手を上げている。


「相手のスキルはなんですか? それによって対応も違ってくる」


「具現化系ではないかと言われている。彼女は初めて捕まった時、周りの捜査官を撃ち殺し、パトカーを強奪して逃げている」


 囚人に銃など持たせる訳がない。それは尤もな考察だ。


「なるほどなあ……」


 私は、思わず呟く。

 今回もまた、厄介事になったわけだ。




+++




 闇の中に、二メートルはあるかという鬼が佇んでいる。その体が縮小を始め、最後には人となった。

 拍手が部屋に響き渡る。

 病的に細身な男だ。


「君は鬼の力を完全に制御した初めての超越者だ。君ならば厄介者の排除は簡単だろう」


「厄介者……?」


「斎藤翠さんと、皆城大輝くん。二人共ソウルキャッチャーだ」


 そう言って、細身な男は歩き始める。


「一人は行方不明だが、翠さんの写真と住所は知らせるよ。すぐに動けるかい?」


「もちろん。この力さえあれば、俺はもうちまちま働かなくてすむんだ」


 細身な男は目を細める。

 裏切りによって予想外の展開になったが、まだ道は続いている。

 障害となる二人のソウルキャッチャーを排除さえすれば。



第二話 完

次回『退屈な日常に幸福はある』

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