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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第五章 泣かないで、あなたは私が守るから
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高樹

 準備は整った。拳銃と銃弾のつまった袋は外の木陰に隠してある。

 食料をつめた鞄は夏希が隠している。


 後は、出発するだけだ。

 皆が寝静まった後、食料をつめた鞄を背負って、僕は夏希とともにショッピングモールの出口へ立った。

 バリケードをどかしていく。

 電気が、ついた。


「なにやってんだ、こんな時間に」


 振り向くと、高樹が僕達に銃口を向けていた。


「佇め、撫壁」


 そう言って、僕は撫壁を呼び出す。

 そして、夏希を後ろにかばった。


「私達はここを出て行く。世話になったし、皆にも愛着はあるけど、私達は外に帰りたい」


「帰れるわけないだろ!」


 高樹が叫ぶ。


「ここらへん一帯がモンスターの生息地に囲まれてるんだぞ! 自殺しに行くようなもんだ!」


「それでも、私は行く。お母さんに、謝らないといけないから」


「馬鹿げてる!」


「馬鹿でいい」


 夏希は断言する。


「賢く危険を避けて長生きするぐらいなら、私は馬鹿で大通りを歩く人間でありたい」


「くっ……」


 高樹の表情が歪む。

 その指のトリガーが、引かれた。

 銃声がなる。

 撫壁は銃弾を跳ね返し、跳弾の音が周囲に響き渡った。


「じゃあ、高樹。行くから」


 そう言って、夏希は歩いていく。


「お前がいなくなったら、俺はどうすればいい?」


 高樹は、膝をつき、縋るように言う。


「自分で決めな。あんた、ここのリーダーでしょ」


「サブリーダーをやっていたのはお前だ」


「逃さないために役職をつける。あんたのそういうとこ、苦手だった」


 そう言って夏希は歩いていった。

 高樹は俯き、銃を投げ捨てた。

 僕は夏希の後を追う。


「おいおい、いいのか? あんな別れ方で」


「あこまで言わないと、高樹は納得しないよ」


 夏希は苦笑して歩いていく。


「無理、すんなよ」


「無理なんてしてないよ」


「涙声で言われてもなあ……」


 夏希は、今にも泣きそうな声だったのだ。


「本当は」


 夏希は、躊躇うように言葉の続きを紡ぐ。


「お互い、納得できる別れ方をしたかった」


 僕は、夏希の頭を撫でた。


「人生にはこういうこともある。お前は自分の意志を通したんだ。誇っていい」


「それが間違いかもしれなくても?」


「いい経験にはなる。大事なのは、挑戦することだ」


「……いいこと言うね」


 夏希は微笑んだ。


「じゃあ、食料は私が持つから、銃弾は撫壁で引きずってってね」


「わかったよ、リーダー」


 二人の間には、連帯感が生まれつつあった。



第五話 完

次回『魔物の巣食う地へ』

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