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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第五章 泣かないで、あなたは私が守るから
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怪物との戦闘経験はありますか?

 それから、僕は彷徨い歩いた。

 歩いていれば、いつかは人里に辿り着くと思ったのだ。

 幸いだったのは、すぐに川に辿り着いたこと。

 これで水分補給に支障はない。

 食事がなくても、二週間は生き延びられると思いたい。


 夜になって、空を見上げる。

 月の中に、不思議な景色が見えた。

 それは、中世の時代。鎧を着た騎士達が、馬に乗って活躍している。


(なんだよ、ここ。どういうことなんだよ、これ)


 そう思って、泣きそうになりながら寝転がる。

 幸いなことに、気候は温暖で、僕は風邪をひかずに済んだ。



+++



 異変は五日目にやってきた。

 鬱蒼と生い茂った森林に、入ろうか考え込んでいた時のことだ。

 少女が、森から飛び出してきた。

 そのまま、彼女は駆け続ける。


 その背後から、象が二足歩行になったような生物が追いかけてきた。


「なっ……」


 あんな生物、見たことない。

 本格的に疑問が強くなる。

 ここは、どこだ?


 しかし、迷っている暇はない。

 僕は少女と象の怪物の間に入ると、詠唱した。


「佇め、撫壁!」


 撫壁をしっかりと地面に突き立てる。そして、全体重を盾にかける。

 象の怪物の前進は止まった。


「愚か者め。お前の腸を食ってくれるわ!」


 そう言って、象の怪物は撫壁を何度も殴る。

 しかし、撫壁は地面に埋まっていくだけで、ひび割れることはない。

 相手は息切れしたのか、一時的に動作を止めた。僕は撫壁の裏につけられているショートソードを二本、鞘から抜き放った。


 そして、撫壁を持ち上げてシールドチャージすると、そのまま撫壁ごと相手を貫いた。

 背面からの攻撃に弱い撫壁。その特性はこんな時のためにある。


「ぐおおおお!」


 呻き声がする。腹部辺りに突き刺さったのだろう。

 そして、僕は追撃を仕掛ける。


「悪いな。これも生存競争だ」


 そう言って、僕は相手の喉元目掛けてショートソードを突き立てた。

 重い体が、地面に倒れ伏す。

 僕は撫壁を消すと、唖然としている背後の少女に話しかけた。


「怪我はないかい?」


「凄い……モンスターを一人で倒した」


「俺の撫壁は無敵だからね」


「ねえ、お兄さん。行き場所ある?」


 少女が目を輝かせて言う。


「いや、それが道に迷ってるところだ。人里に行きたい」


「じゃあ、うちにおいでよ。人の住んでないスペース、まだまだ一杯あるから」


 限界集落にでも来てしまったのだろうか。

 それにしては、さっきのモンスターはなんだ? 日本どころか地球のどこを探しても生息していそうではない。


「でさ。ついでに、その盾であのモンスターを運んでくれないかな」


「運ぶ?」


 僕は戸惑うように言う。


「今日の食料だ」


 そう言って、少女は天真爛漫に微笑んだ。

 僕は、あの怪物を食べるという発想に若干引いていた。


 なんにせよ、物語が動き始めるのを実感としていた。



第二話 完

次回『夏樹達の現状』

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