ソウルキャッチャーズ
「さて」
大輝が呟くように言う。
「ここまできたらお互いの手札は晒すべきだろう」
「変身能力のみ」
アラタの一言に大輝は頷く。
「戦闘中に水月を守る役だな」
「そりゃないぜ」
アラタは嘆くように言う。
「俺も鬼と戦ってみたい」
「お前が死んだらうちの妹が悲しむだろ。後方支援に徹しろ」
「ういー……」
「青葉。貴様はどうだ?」
もう隠している必要はないだろう。
僕は息を吸って、吐いた。
そして、語り始める。
一時期は消えて見えたその左腕は、気合を入れたら元に戻っていた。
「皆さんの持っている大体のスキルは使えると思います。スナッチャーも使えます」
「お前、ソウルイーターか?」
大輝が疑わしげに言う。
「いえ、ソウルキャッチャーですよ」
僕は微笑んで言う。
「ふうん」
「大輝もほとんどソウルキャッチャーだから、ソウルキャッチャーズだな」
アラタがからかうように言う。
「五月蝿いよ」
大輝は照れ臭げにそっぽを向く。
「じゃあ、作戦通り行きましょうか」
僕は言う。
「うん。行こう……この世界を救いに」
翠がそう言って、一同頷いた。
+++
神様ごめんなさい。
そんなことを、水月は思っている。
信仰心を失ったわけじゃないんです。けど私も若い女性だから異性といちゃついたりもしてみたいんです。
邪でしょうか。
なら帰ったら心を入れ替えます。
帰れなかったら神様は心が狭いなと恨んで死にます。
そこまで、水月が考えた時のことだった。
三人が、公園の中央へと歩いてきていた。
翠、アラタ、青葉の三人だ。
「確かにあんたらの中からは鬼の力の気配がする……シスターは、それと交換だ」
「奪った鬼の力で、あなたはなにをしようと言うの?」
翠が問う。
「くく、決まっている。更なる破壊と混乱だよ。月葉から範囲殲滅の手法も吸収した。私は最強の超越者になる」
その目が、翠の冷めた目を見て逸らされる。
「ま、あんたら一味は今回協力してもらったから狙わないでやるよ」
「それはありがたいわね」
「じゃあ、もらうぞ。鬼の力」
そう言って、春香は翠に近づいていく。そして、胸のハートに手を伸ばした。
駄目だ! と水月は叫びたくなる。
そんな奴に力を与えては駄目だ、と。
しかし、猿ぐつわをされていて喋れない。
虚しい呻き声が響き渡る。
その時のことだった。
水月はお姫様抱っこをされて、宙を移動していた。
長い長いストライド。
水月を抱き上げた大輝は、草原からかつては堀だった部分に飛び降りると、水月を下ろした。
「ここでアラタと待機していてくれ」
「私は、足手まといでしょうか」
落ち込んで、俯く。拐われた直後にする質問でもなかった。
「活躍の日は、きっとくる。今日は、ソウルキャッチャーズに任せてくれ」
そう言って、大輝は高々と跳躍した。
入れ替わりに、変身姿のアラタが吹っ飛んでくる。その襟首を掴むと、大輝は堀へと落とした。
決戦は、三対一で決することになったようだった。
第十四話 完
次回『鬼神』
次々回の『出会いと、別れと、再会と』で第四章は終幕となります。




