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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第四章 必ず君を生き延びさせてみせる
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ソウルイーター対ソウルイーター

 ソウルイーター花月は、夜の町を歩いているところだった。

 外灯も殆どなく、真っ暗だ。


(田舎だなあ……)


 大抵のソウルイーターは地方都市に配置された。

 それが、どうしてこの地に配置されたソウルイーターがいたのだろう。

 そんなことを、花月は思う。


 左手から気配を感じた。

 そう思った時には遅かった。


「よう!」


 左腕を体ごと思い切り蹴られた。

 左腕はひしゃげ、体はきりもみしながら地面を転がっていき、畑に落ちた。

 慌てて立ち上がり、臨戦態勢をとる。


「大輝? お父様を裏切ったという噂は本当だったのね?」


 パーカーのフードで顔を隠した青年に、花月は声をかける。

 目深にかぶったフードの下からは、赤い目の光が見えていた。


「ああ、裏切った。アジトもいくつか見つけたんだがな。俺の情報じゃわかんないもんばっかだったから警察にとりあえず通報しといたわ」


 そして、彼は喉を鳴らして笑う。


「努力が水の泡になっていくってどんな気持ちだろうなあ。せっかく俺達みたいなデザイナーベイビーも作ったのにな」


「デザイナーベイビー?」


「知らないのかよ」


 大輝の赤い目が、真っ直ぐに花月を見る。


「俺達は全員、選ばれた遺伝子で作られ、科学技術でいじられてできた、デザイナーベイビーだ」


「そんな……そんなわけない!」


「自分と親のDNA鑑定をお勧めするよ」


 そう言って、大輝は肩を竦める。


「まあ、ここで俺に殺されなかったらだがな」


 大輝は直進して、拳を振るった。

 花月は避けた。避けたつもりだった。

 しかし、相手の拳は花月の頬にクリーンヒットしていた。


 いけない。脳震盪が起こる。

 どうやら、身体能力は相手が上。

 よろけながらも、右手に剣を召喚し、左手で氷の壁を張り巡らせる。


「俺は元々どのスキルでも適性がそこまで高くはなかった。けど、最近わかったことがあってな」


 そう言って、大輝は手を掲げる。


「俺が一番適性があるのは、風だ」


 風の刃が三本放たれる。

 その瞬間、花月は悪寒を覚えて空中へと飛んだ。

 氷の壁に三本の巨大な爪で引っ掻いたような跡ができていた。


「待ってたぜ」


 大輝の姿は、花月の目の前にあった。

 大輝の拳が、花月の腹にめり込む。

 骨の折れる、鈍い音がした。


 そして、花月は農作物を潰しながら畑に落下する。 

 大輝は赤い目を輝かせてゆっくりと近づいてくる。

 その左手から、光の手が伸びていた。


「さて、これで二個半か。中々先は遠いな……」


 光の手が、花月のハートに触れようとする。

 それを防いだのは、銃声だった。


 大輝は跳躍して後退していく。


 そして、春香が花月を抱き上げて、逃走を開始していた。


「バケモンだったわ、あいつ。流石、天衣無縫と戦って引き分けた男」


 腕や腹の痛みに顔を歪めながら、ぼやくように言う。

 春香は前だけを見ている。


「強くなろう。あいつらより。そしたら、もう虐げられなくて済む」


「……そうだね」


 花月は、少し戸惑っていた。

 春香の言葉に篭っているのは、どこか狂想のような、そんな気がする。

 何故だろう。

 その答えは、わからなかった。


第九話 完

次回『ヒーロー二人』

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