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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第三章 私達で、終わらせよう
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歩き出そう、もう一度

 緊張して、教室の前に立つ。

 噂になってないかな、不登校をからかわれないかな、一人でやっていけるかな。

 色々な思いが脳裏をよぎる。

 けど、こうも思うのだ。

 あの子はもういないから、私は一人で頑張らなければならない、と。


「おはよー」


 そう言って、何事もなかったかのように教室に入る。

 そして、会話をしている女子達を見回した。


 ロッカー傍のグループは駄目だ。接点がない。

 ドア付近のグループはスポーツ部ばかりだ。球技大会で接点はあるが、あまり馴染みはない。

 黒板傍のグループは大人しそうで居心地が良さそうだ。

 私は黒板傍のグループに向かって歩いていった。


「ねえ、私も混ぜてくれない?」


 それが、私の第一歩。

 あの子は見ているだろうか。情けない私の頑張る姿を。

 あの子は見ているだろうか。前に進んでいく私を。


 大学生になっても、社会人になっても、忘れないだろう。

 私を見守る、けして敵にはならない、ある視線を。


「いいよ。久しぶりだね、園部さん」


「なにしてたの?」


「ちょっと冒険をね」


「冒険?」


 グループ全員が異口同音に言う。

 どこから話そう。どこまで話そう。私の冒険譚を。

 朝の空はどこまでも綺麗だった。



+++



 警察病院で巴は目を覚ました。

 左手は撃ち抜かれ、右腕は折れてギプスをつけられている。

 自分で食事すらできない状況だ。


 左腕に付けられている点滴が視界に入った。


「起きたかね」


 壮年の男性の声がする。


「ええ、まあ」


 私は曖昧に答える。


「私はどうなるんですか? 少年法が適用されるとしても相当入ってなきゃ駄目ですよね」


「ねえ、君」


「はい?」


「働いて償うって気はないかい?」


「……はい?」


 思わぬ言葉だ。


「君のような優秀なスキルキャンセラーを失うのは損失だ。我々は君の力を十全に使いたい」


「……断れば?」


「まあ、数年は刑務所だね」


 窓の外を見る。

 青い空だ。

 自分を説得したあいつも同じ空を見ているのだろうか。

 そして、自分が傷つけた何人がこの空を見れなくなったのだろうか。


「好きにして。今は、休みたい」


「相当疲労してたようだしね。ゆっくり休むといい……しかし、その疲労した体で連戦を重ねるとは、まさに天性の戦士だな」


 どうとでも言ってくれ。

 そう思いながら、巴の意識は闇の中へと落ちていった。

 久々に、いつもと違う夢を見た。

 それは、家族でハイキングへ行った時の夢。

 好物の取り合いを兄弟でし、両親がそれを微笑ましげに見ている。

 心地よい夢だった。



第三章 完

次回から第四章となります。

六話ほど投稿します。

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