表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第三章 私達で、終わらせよう
55/391

炎の魔女、再び

 巴は、通り過ぎていく男の心臓を一瞬の動きでダガーナイフで刺した。

 服で血を拭い、内部にある鞘に収納する。

 後方で悲鳴があがった。


 巴は気配を消して、その場を黙って去っていく。

 それもまた、巴の家族が訓練で与えてくれた技術だ。


 そろそろ、場所を変えなければならないと巴は思う。

 スクーターを置き去りにしてから、行動範囲が圧倒的に狭まった。

 警察が嗅ぎつけてきてもおかしくない頃だろう。


 そして、裏道へ入る。

 マントを回収して、一応フードはかぶらずに身に纏う。

 そして、盗んだ自転車に辿り着く。

 新たに買った鍵を開けていく。


「はあい、スキルキャンセラー」


 声をかける者がいて、巴はゆっくりと顔を上げた。

 そこには、小柄な女性超越者が一人で立っていた。


「自殺志願者? 一人で来るなんて」


「あらあら、自惚れも大したものね。自分が負けるとは微塵も思っていないみたい」


 巴は立ち上がる。そして、両手で二本のダガーナイフを取り出す。


「幼い頃から訓練を受けた。スキル無しの勝負じゃ私に勝てるやつはいないわ」


「さて、どうでしょう」


 超越者は人差し指で天を指す。


「ヒントは、鬼の力が通じたことだった」


 巴は黙り込む。


「スキルキャンセラーなのに鬼の力は通じる。それはつまり、鬼の力による加速を軽減できなかったこと。つまり、答えは簡単」


 超越者は、ポケットから数十個のパチンコ玉を取り出す。


「スキルそのものをキャンセルしても、二次被害的なダメージなら、あなたに通用するということ」


 炎が吹き荒れた。

 パチンコ玉が徐々に赤くなっていく。

 そして、徐々に溶け始めた。


 これはいけない。そう思い、巴は前を向いたまま後退する。


「一応言っとくわ。私は野球部なんだ」


 そう言って振りかぶると、パチンコ玉が投じられた。

 ダガーナイフで顔にくるものは全て弾き落とす。

 しかし、胴体までは守りきれなかった。

 マントを貫通し、防弾チョッキをも溶かし、皮膚が焼ける嫌な匂いがする。

 その痛みに、思わず声を漏らす。

 マントが焼け始め、慌てて脱ぎ捨てる。


「幼馴染の形見であるこのスキル。私との適合率がすこぶるいい。だから、私はこう呼ばれている」


 炎を纏い、その超越者は言う。


「二代目、炎の魔女と」


「あんた、名前は?」


 巴は、憎々しげに超越者を睨んで言う。

 超越者は、既に次の玉の発射準備を終えていた。


「楓。氷と炎の超越者。聞いてどうするの? 最後の敵ぐらいは覚えていたかった?」


「いつか、絶対に、殺してやる」


 そう言って、巴は駆け出した。

 陸上競技ならば新記録を出せるだろう速度で。



+++



「スキルキャンセラー、多田神社方面へ逃亡中!」


 トランシーバー越しの報告を聞いて、翠は腰を上げた。

 結局、自分の出番になったわけか。

 これも運命だろう。


 今、ドローンが空中で巴の動きを追っている。

 巴自身は気がついてもいないだろう。


「位置データを送信してください。私も移動します」


 翠はトランシーバーにそう伝える。

 即座に、スマートフォンに着信があった。

 そう遠くない位置だ。


 翠は、移動を始めた。



第十三話 完

次回『最強は立ちはだかる』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ