それは、私が歩みを止めた日
私達の長い会話は、海を見た瞬間に途絶えた。
夏の盛りは過ぎて、利用者は少なくなっている。
「この町できっとずっと過ごすんだろうね」
あの子が言う。
私は苦笑して返す。
「大学もここの県で探すの?」
「うん。だって、ここが私達の町だもん」
「そうだねえ。小学中学高校まで一緒だったもんね」
「それとも勇気は他の県に進学するのかな?」
少し不安げにあの子が言う。
私は海を眺めてしばし考え込んだ。
都会への憧れはある。けど、この親友をどうして放置しておけようか。
「この県で過ごすよ。ずっと一緒だ。旦那ができても、子供ができても、私達の友情は変わらない」
「そうだね。ずっと一緒だ」
そう言って、あの子は私の手を握る。子供の頃からの二人の癖だ。温もりに、私は居心地の良さを感じる。
永遠というものはあるのかもしれない、と私は思う。
場面が変わる。
ダガーナイフで胸を貫かれたあの子。
血は物凄い勢いで広がっていきアスファルトの地面を濡らす。
その体を抱いて、私は慟哭した。
そこで、目が覚めた。
泣いていた。
こうして泣いて目覚めるようになってからどれほどの時間が経つだろう。
自分の無力に嫌気がさしてどれほどが経つだろう。
ただ、時間だけが経っていく。
そんな自分が嫌だった。
私は、歯車が回り始める瞬間を待っていた。
それを回すのは、きっと自分自身なのだろう。
第一話 完
次回『超越者キラー』




