後日談
「で、ソウルイーターとして活動してきた、と」
刑事の一人が、戸惑うように言う。
「けど君、スキル一つも持ってないよね?」
「ええ、それはそうですけど……」
響はうつむいて、戸惑いながら答える。
「困るんだよね。なにもしてない人間がなにかしたーって騒いで。まあ、たまにあるんだけどね」
刑事はそう言って、微笑んでウィンクした。
「ヤミ金を営んでる男が死んだはずです」
「ああ、心臓発作だろう? 自然死だ、自然死」
「けど……」
「さあ、帰った、帰った」
刑事の一人がそう言うと、もう一人が扉を開ける。
それでも座り続ける響に根負けしたように、響と向かい合っている刑事は溜息を吐いた。
「二つ、言おう。今回の情報で超越者の研究は十年は進んだ。そして、君を脅して連れまわしたというソウルイーターの手紙がある」
響は驚いて前を見て、そして再びうつむいた。
そして、しばし悩んでいたが、そのうちひとつ頷いた。
「この罪は、自分の人生の中で償っていこうと思います」
「ああ。立派な人になるんだぞ」
そして、響は警察署を出た。
アラタが、心配そうに外で待っていた。
響は階段を駆け下りて、アラタに抱きつく。
「無罪放免」
「マジで?」
アラタは、目を丸くする。
「マジです!」
「はー。響のスキルが盗まれたって聞いた時は殺してやろうかと思ったが、あいつはここまで考えてたのかな」
「どうだろうねえ」
沈黙が漂う。
彼のことを思い出すと、旅のことを思い出す。
二人して、今回の旅のことを思い出しているのだと思った。
波乱万丈な旅で、今となっては夢みたいだと思うけれど、悪い旅ではなかった。
「で、これからどうする?」
「どうしようかなあ……また旅に出ようかな。お母さんには、合わせる顔がないし」
「俺の家に来ないか?」
「アラタ君ちに?」
「居候一人養うぐらいの余裕はあると思うんだよな。なにより、響は俺の命の恩人みたいなもんだ。下にも置かない扱いをするだろう」
「ふむ」
考え込んでいた響が、悪戯っぽく微笑む。
「もう、冒険はいいんだ?」
「今のところはな。情報と協力を引き換えに逮捕を免れた。ホント際どいとこだった」
アラタは、遠くを見るような表情で、そう答えた。
「けど、いつかまた旅に出ようと思う。その時は……」
「うん。その時は、私も一緒に行くよ」
響はアラタの手を握る。
二人は固く手を握りしめ、家路へとついた。
旅は終わった。
かけがえのないものを残して。
第二章 完
次回『プロローグ』
第三章開幕です。




