表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二章 冒険を、望んでいた
42/391

後日談

「で、ソウルイーターとして活動してきた、と」


 刑事の一人が、戸惑うように言う。


「けど君、スキル一つも持ってないよね?」


「ええ、それはそうですけど……」


 響はうつむいて、戸惑いながら答える。


「困るんだよね。なにもしてない人間がなにかしたーって騒いで。まあ、たまにあるんだけどね」


 刑事はそう言って、微笑んでウィンクした。


「ヤミ金を営んでる男が死んだはずです」


「ああ、心臓発作だろう? 自然死だ、自然死」


「けど……」


「さあ、帰った、帰った」


 刑事の一人がそう言うと、もう一人が扉を開ける。

 それでも座り続ける響に根負けしたように、響と向かい合っている刑事は溜息を吐いた。


「二つ、言おう。今回の情報で超越者の研究は十年は進んだ。そして、君を脅して連れまわしたというソウルイーターの手紙がある」


 響は驚いて前を見て、そして再びうつむいた。

 そして、しばし悩んでいたが、そのうちひとつ頷いた。


「この罪は、自分の人生の中で償っていこうと思います」


「ああ。立派な人になるんだぞ」


 そして、響は警察署を出た。

 アラタが、心配そうに外で待っていた。


 響は階段を駆け下りて、アラタに抱きつく。


「無罪放免」


「マジで?」


 アラタは、目を丸くする。


「マジです!」


「はー。響のスキルが盗まれたって聞いた時は殺してやろうかと思ったが、あいつはここまで考えてたのかな」


「どうだろうねえ」


 沈黙が漂う。

 彼のことを思い出すと、旅のことを思い出す。

 二人して、今回の旅のことを思い出しているのだと思った。

 波乱万丈な旅で、今となっては夢みたいだと思うけれど、悪い旅ではなかった。


「で、これからどうする?」


「どうしようかなあ……また旅に出ようかな。お母さんには、合わせる顔がないし」


「俺の家に来ないか?」


「アラタ君ちに?」


「居候一人養うぐらいの余裕はあると思うんだよな。なにより、響は俺の命の恩人みたいなもんだ。下にも置かない扱いをするだろう」


「ふむ」


 考え込んでいた響が、悪戯っぽく微笑む。


「もう、冒険はいいんだ?」


「今のところはな。情報と協力を引き換えに逮捕を免れた。ホント際どいとこだった」


 アラタは、遠くを見るような表情で、そう答えた。


「けど、いつかまた旅に出ようと思う。その時は……」


「うん。その時は、私も一緒に行くよ」


 響はアラタの手を握る。

 二人は固く手を握りしめ、家路へとついた。

 旅は終わった。

 かけがえのないものを残して。



第二章 完

次回『プロローグ』

第三章開幕です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ