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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二章 冒険を、望んでいた
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受け継がれし思い

 大輝は、程なく自分の名前が書かれたファイルを見つけた。

 開いて、文字を読んでいく。

 そこには、知らない男性の精子と知らない女性の卵子を使って子供を作ったという記述がある。


 二人とも、超越者として優れた人間だったようだ。

 ならば、母は浮気などしていなかったのだ。

 自分達を、裏切ったりなどしていなかったのだ。

 そう思うと、大輝は涙が出そうになる自分を堪えた。


「ソウルイーターは全員デザイナーベイビーだったてこと?」


 書類の数々を読みながら、ソウルキャッチャーが呆れたように言う。


「そうらしいな。才能の高い人間を作り出し、後々ソウルイーターとしての力を与えていた。そういうあらすじらしい」


「なら、全ての元凶じゃない」


 響は、座り込んで呆然としている。

 その背を、アラタが撫でている。


「さっさと警察を呼んで書類を回収してくれ。俺達は、もう行く」


「わかったわ。ここを守らなければならないから、私も迂闊に動けないしね」


 ソウルキャッチャーはそう言って、電話をかけはじめた。

 大輝達は外に出た。

 そして、いつもの駆け足で高速移動する。

 気がつくと、琵琶湖だった。


「でっけえなあ……悩みが溶けてくみたいだ」


「私はそう気楽にはなれないわ」


 響はそう、沈んだ声で言う。


「なあ、坊主。響と少し話したいんだけど、外してくれるか?」


 アラタは迷うような表情になった。

 響は苦笑して、アラタを見る。


「いいわ、アラタ。外して」


「わかった。自販機でも探してくるよ」


 そう言って、アラタは歩いていく。

 そして、響は大輝に向かいなおった。


「それで、なに? ソウルイーター。なんのよ……」


 その言葉は、最後まで放てなかった。

 大輝の光の腕が、響のハートを掴んでいたから。


「話を聞く限り、全ての元凶を倒すには少し力が足りなそうだ。だから、お前のスキルを借りようと思ってな」


 響は唖然としていたが、そのうち真顔になる。


「あいつを追うのね。ソウルイーター」


「他に、やることもなくてね」


「わかったわ。私の力、持っていって。お父様から魂も結構吸ったから、力になれると思う」


「ああ。約束する。お前の力で、あいつを追い詰めると」


 そして、吸収が終わった。

 大輝は、響に背を向けて歩いていく。


「じゃあな。今回の旅は終わりだ」


「ソウルイーター」


 響が、声をかける。

 大輝は、振り向いた。


「書類によれば、私とあなたは父親違いの兄妹らしいの」


 思わぬ一言に、大輝は絶句する。


「期待してるよ、お兄ちゃん」


 こそばゆい気分になった。

 逃げるように、再び相手に背を向ける。


「じゃあな。もう会うこともあるまい」


「ええ。さようなら」


 今生の別れだと思った。

 しかし、互いに未練のない、すっきりとした別れになったと思う。

 きっと、この旅を一生忘れない。そんな予感があった。



第十三話 完

次回『後日談』

第二章大団円です。

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