表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第三十二章 ソウルキャッチャーズ(最終部最終章)
390/391

ソウルキャッチャーズ

 ミカの死体の傍で、三人は顔を突き合わせている。


「再生、してるわよね」


 そう言うのは、楓だ。

 ミカの傷口は徐々に再生しつつあった。

 このままだと、復活するのもすぐだろう。


「ミカが今まで溜め込んできた魂。それが、ミカの命のストックとなっている」


 言ったのは、私達ではない。石神幽子だ。


「……正気に戻ったの?」


 楓の問いに、幽子は頷く。


「ミカは長い時間を生きてきた。安倍晴明、徳川秀忠と首都機能を守る人間が現れた時には他の人間の中に入って睡眠状態に入っていたけれど。そして、ミカの中には今まで吸収してきた沢山の魂がある。それは、ミカの命のストックとなってミカを再生させる」


「防ぐ手段は限られているな」


 覚悟を決めたように、大輝が言った。


「ソウルキャッチでミカの吸収してきた魂を全て吸収する。それで、ミカは消滅するはずだ」


「……並大抵の量じゃないわよ。しかも糸がこんがらがったように結びついている」


 私は怖気を感じながら言う。

 ミカの貯蓄した魂は生半可な量ではなかった。


「なに。また睡眠時間が短くなるだけだ」


 大輝は飄々とした口調で言う。


「私も、協力します」


 幽子が言う。


「それはやめたほうがいいなあ」


 どこか穏やかな声が、周囲に響いた。


「青葉!」


 私は思わずその名を呼ぶ。

 青葉が、その場に現れていた。


「ここで魂を吸収した場合、君はまたミカの魂を吸ってしまい、その復活に協力することになる。未来はそれで混乱状態だ」


「けど、こんな量の魂、脳が焼ききれちゃうわ!」


 幽子が、声を荒げる。


「……焼ききれて、いいさ」


 大輝は、穏やかな口調で言う。


「罪を重ねてきた。人を殺してきた。俺の中には行き場のない魂が山ほどある。それを償えると言うなら、死ぬのも悪くはない」


 大輝はそう言って、腕を持ち上げた。そこから、金色の光が放たれ始めた。

 大輝が吸収していた魂の具現化だ。


「魂は全て放出した。ミカのストックした魂を吸う」


 そう言って、大輝はミカに手を添えた。


「俺が志半ばで倒れた場合は、後を頼む」


 大輝の言葉に、私も、幽子も、青葉も頷いた。

 私達は、ソウルキャッチャーズ。

 人の魂を吸い取る、異能の持ち主だ。

 後は、継げた。

 大輝が魂を吸収し始めた。


 それを、私達は息を呑んで見守っていた。

 その日、呪術師事件と呼ばれた事件は終わった。

 ミカの消滅とともに。



第十一話 完

次回大団円『それぞれのその後』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ