三対一で
大輝が、巨大な腕を何本も生やして自分の周囲を徘徊させる。
そして、ミカの気配を察知すると即座に手を振り下ろさせた。
しかし、その時にはミカは既に他の場所へと移っている。
ワープだ。
巨大な腕。
攻防一体のこの腕が、この長い戦いが始まった最初から最後まで大輝の切り札だ。
「大輝!」
私はそう言って駆けて行く。
「翠か」
大輝は腕を消す。
「存外、消耗した。連続ワープで尻尾も掴めない」
ミカが巨大な炎の球を振り下ろす。
それを、楓の氷の壁が防いだ。
「メインを代わるわ。サブに入って体力の回復に努めて」
私は淡々とした口調で言う。
「了解」
「ミカ。ワープ合戦じゃ決着がつかないのは実証済みだったわよね」
私は、ミカに向けて言う。
「……そうね。それで、なにを考えているの?」
ミカは薄く笑って言う。
「私はワープを使わない。あなたもワープを使わない。そういう縛りで戦いましょう」
ミカは、しばし考え込んだ。
「いいでしょう」
そう言ったミカの手には、光の剣が現れる。
私も、手に光の剣を構えた。
スキル、光剣。魔力を篭めれば篭めるほど強靭になるこの刃は、条件次第では何者をも斬る最強の武器だ。
私とミカは光剣と光剣を幾重にもぶつけあった。
氷の柱と巨大な腕が迫ってきて、ミカは一旦後方へと進む。
それをよんでいた私は、前進した。
全力の突進。
光の剣がミカの心臓を貫いた。
「この程度……」
私は剣をそのまま上へと強引へ持ち上げる。
脳裏には、この戦いが始まる前の短いミーティングがあった。
藤原藤子がホワイトボードに脳、と大きく書いて丸で包む。
「バラバラにしても即時再生する。そんなミカの弱点は、行動を司る脳以外にないでしょう」
「思考を停止させるってわけか」
大輝が淡々とした口調で言う。
「そういうこと。銃弾でも、剣でも、矢でもいい。とにかく、ミカの脳に叩き込んで。それで、相手のスキル攻撃も回復も一時沈静化する」
「一時、と言うと?」
「相手は化物だから、最終的には細胞も残さず焼却するしかないでしょうね」
全員が、息を呑んだ音が聞こえた。
そして今、私はミカの胸から脳に向けて剣を振っている。
ミカが剣を振り上げようとした。
それを、氷が捕らえる。
スキルキャンセル効果を持つその氷は、同時にミカのワープをも妨害した。
「うおおおおおおおおお!」
私は雄叫びを上げる。
私の剣は、ミカの脳を破壊し、天を指していた。
ミカの体が、地面へと崩れ落ちた。
第八話 完
次回『王剣アラタ』




