翠チーム、楓チーム、藤子チーム
「ついにきたか、この日が」
車から降りた恭司が、複雑な思いをこめて言う。
私とセレナは後部座席から降りた。
確かに、古城跡地は変わっていた。
石垣がなくなり、代わりに背の高い宮殿が建っている。
こうしている間にもミカはゲートを広げているだろう。
どうにかせねばならなかった。
次いで、軽自動車がドリフトしながら恭司の車の隣に停まった。
運転席から降りてきたのは藤原藤子。
「こりゃあやられたね。ひでえや」
他人事のように言う。
巴、アラタ、大輝、灯火も一緒だ。
それから数秒もしないうちに中原家グループが混ざり、元々現地にいた勇気が加わり、十一人の集団となった。
「不思議ね」
楓は、微笑んで言う。
「負ける気がしないわ」
「私もよ」
藤子が、胸を張って言う。
二人は、手と手を握り合った。
そして、私は宮殿の傍まで移動したのだった。
「入り口が三つある」
楓は、呟くように言う。
「罠、ではないだろうね」
藤子は確信したように言う。
「気配を察知したところ、全部の入り口の先に大きな気配がある。多分、一つの道だけを選べば背後から急襲を受ける」
「三方面の敵を一気に倒せってわけか」
私は、腕を組んで考え込んだ。
一分ほど、無言で時間が経った。
皆の視線が楓に集まる。
「チーム分けしましょう」
楓は、淡々とそう言った。
「間違えないでほしいのは、今回の目的はあくまでもミカだということ。数の利を通して善戦しても意味がない。最奥に待つミカに一撃を入れることに意味がある。バラバラにしても再生する敵。それを倒すにはソウルキャッチャー、スキルキャンセラーの力が必要になる。セレナ、ちょっと火球を宮殿に撃ってみて」
セレナが、宮殿に向かって火球を放った。
それは、あっという間にかき消えた。
「建物そのものにスキルキャンセル効果が付与されている。ルート短縮は無理ね」
淡々と言って、楓は言葉を続けた。
「斎藤翠、辻白恭司、遠野アラタ、言ノ葉灯火」
「はい!」
四つの声が重なる。
「あなた達は正面のルートを」
「了解」
私に恭司にアラタ。この土地における最強メンバーと言えるだろう。
そこに補佐役の灯火を入れることで堅実性も増している。
「藤原さん、木下巴、皆城大輝」
「はい」
「おう」
「右手のルートを頼むわ。大輝、上層で会いましょう」
「了解」
「話はわかったわ。ここは指示に従いましょう」
と、藤子。
「精々死なないようにな」
と、大輝。
「中原相馬、楓……まあ、私ね。園部勇気、斎藤セレナは左手から進軍します」
楓が、手を叩く。
「一人でも多くを先へ。そして、先へ辿り着いても数人で挑んで。私達は死ににきたんじゃない。勝ちにきたんだ」
私達は頷いた。
そして、それぞれの進軍が始まった。
第四話 完
次回『再会は激情と共に』




