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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第三十一章 老兵最後の戦い
379/391

決戦手前

「お」


「よう」


 慎一郎と鏡志朗はホテルの廊下で鉢合わせていた。

 鏡志朗は微笑む。


「クリエイターを撃破したそうだな。お前の腕を疑って悪かった」


「第三神将がでかい炎の化物を一人で請け負ってくれたおかげだよ。俺達だけじゃもっと時間がかかっていた」


「謙遜するな。それを言ったら俺は一○九が巨大な炎の化物に襲われているのに歯噛みしてただけだ」


「お互い苦労したなあ」


「まったくもって」


「多分、俺達はもっともっと強くなれる。伸び代があるんだ。あの人達みたいな天才的な伸びはない。けど、徐々に、確実に、強くなっていけるんだ」


「それが許されるのもまた天才だけどな」


「そうかな」


「そうだよ」


 沈黙が漂う。


「また会おうぜ。お互いが天才であることを祈ろう」


「そうだな」


 そう言い合って、二人は拳をぶつけてすれ違っていった。



+++



「清十郎さんの推薦によって第一神将に格上げになりました。藤原藤子です」


 席が欠けた首都八剣の道場で藤子が座布団の上に正座をして言う。


「清十郎殿はもう亡くなった身。それに貴殿には家格もない。早急ではないかな」


 新たな第八席が言う。


「御尤も。しかし、そういった議論は、次の難敵を倒してからにしましょう」


「次の、難敵?」


「ミカです。彼女の遺体は現場から消えていた。逃げ延びたと見るのが正しい」


「ふむ」


 第八席は、顎を撫でる。


「第一神将、第二神将、第六席はミカ討伐に向かいます。帰らなかった後のことは、第三神将にお任せします」


「はっ!」


 前第一神将が残してくれた時間だ。

 有効に活用せねばならなかった。



+++



 河川敷で、私は川の流れを眺めていた。

 背後に気配がある。


「なんですか? 藤子さん」


 そう言って、平べったい石を投げる。

 石は水を切って跳ねた後、水中に落ちた。


「いや。ここが前第一神将が好んだ場所か、と思ってね」


「らしいですね。一緒に遊ぼうと言ったらここへ行こうと言ったので」


「今頃天国で奥様の尻に敷かれてるでしょうね」


「ふふ。それも幸せの形ですよ」


 しばし、私は石を投げ続ける。


「……決戦だね」


「次は、逃しません」


「うん。本当にそうだ」


「清十郎さん、言ってたんですよね。ミカには弱点があるって」


「弱点か……」


 藤子は、顎に手を当てる。


「私、なんとなくわかる気がするんだよね」


「私も、なんとなくは」


「なら、それを活かさなきゃ前第一神将も成仏できまいよ」


「ですね」


 決意は固まった。最終決戦に向けて、時間は流れていく。



第三十一章 完

次週、最終章『ソウルキャッチャーズ』

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