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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第三十一章 老兵最後の戦い
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第一席、動く

 ここで戦えば議員達を巻き込む。

 そう冷静に判断した楓は、氷をぶつけてミカを会議場の外へと追い出した。そして、外まで追い出す。

 途中には、第二席の弟子達の死体がある。

 第二席はどこだ?

 治療の余地があれば治療したいのだが。


 ミカは、空へと浮いた。

 そして、呟く。


「エレメンタルカラーズ」


 四つの属性がミカの掌の中で混ざりあい、光となる。

 そして、それは放たれた。


 それに対する楓の対応は、氷の盾。

 楓の氷にはスキルキャンセルの効果があり、全てのスキルを無効化できる。


 その時、エレメンタルカラーズの軌道が変わった。

 そしてそれは、楓の足めがけて進んだ。


 痛みを覚悟し、歯を食いしばる。

 その時のことだった。


 空中で、ミカがばらばらに斬り刻まれた。

 破片を踏んで下りてくるのは、第一席。

 ありえない、と楓は思う。

 首都八剣の道場からここまで何キロの距離があるだろう。

 しかし、その距離を第一席は移動しきった。

 まったく、とんでもない身体能力の老体だ。


「第一席!」


「おお、巴の昔の上司の楓くんじゃな。瀬田はどうした」


「第二席は……」


 楓は言い淀む。それだけで、第一席には伝わったようだった。


「そうか。長い付き合いだった」


 肉片がくっついていく。そして、それは人の形を取り戻した。

 その額に、第一席の剣が突き刺さりかけた。

 相手は辛うじて回避したのだ。側頭部に傷跡がある。


「さて、始めようか太古の巫女よ。勝者と敗者が決まった残酷なゲームを」



+++



 首都八剣第四席である私は、ある場所で待機していた。

 仲間達が戦っている。それに協力したい。そんな思いがある。

 護衛はただでさえ数が多いのだ。一人ぐらいいらないのではないか、という思いが強い。


 私は、心を無にして集中する。


「第四席」


 声をかけられて、私は顔を上げた。


「お呼びです」


 私は立ち上がり、護衛主の前に立った。


「退屈しているようですね、第四席」


「いえ、そんなことは……」


 図星を指されて、私は内心冷や汗をかく。


「ここには護衛が沢山います。あなた一人が欠けてもそう変わりはないでしょう」


「はっ」


「ならば、町に出て、一人でも多くの人を守りなさい。あなたの力で、あなたの思うがままに」


「よろしいのですか……?」


「適材適所という言葉があります」


 護衛主は優しい口調で言う。


「君に座っているだけの空間は似合わない」


「ありがとうございます!」


 私は独自のマントを羽織ると、双剣を鞘から引き抜いて、構えた。


「第四席、木下巴! これより独自の行動を取らせていただきます!」


 護衛主は微笑んだ。


「行きなさい。あなたの戦場へ」


 外へ出て、電話をかける。


「藤子さん、第一席は何処ですか?」


「巴、護衛はいいの? 第一席は国会議事堂前で敵のボスと戦闘中。私はクリエイターを迫ってる」


「なら、私は国会議事堂に向かいます」


「任せた。第二席が亡くなっている」


「瀬田さんが……?」


 それは、私にとって衝撃だった。

 第二席。その神がかった実力はよく知っていたからだ。


「気をつけて」


「了解!」


 私は走る。自らの戦場に向かって。



第七話 完

次回『クリエイター』

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