第一席、動く
ここで戦えば議員達を巻き込む。
そう冷静に判断した楓は、氷をぶつけてミカを会議場の外へと追い出した。そして、外まで追い出す。
途中には、第二席の弟子達の死体がある。
第二席はどこだ?
治療の余地があれば治療したいのだが。
ミカは、空へと浮いた。
そして、呟く。
「エレメンタルカラーズ」
四つの属性がミカの掌の中で混ざりあい、光となる。
そして、それは放たれた。
それに対する楓の対応は、氷の盾。
楓の氷にはスキルキャンセルの効果があり、全てのスキルを無効化できる。
その時、エレメンタルカラーズの軌道が変わった。
そしてそれは、楓の足めがけて進んだ。
痛みを覚悟し、歯を食いしばる。
その時のことだった。
空中で、ミカがばらばらに斬り刻まれた。
破片を踏んで下りてくるのは、第一席。
ありえない、と楓は思う。
首都八剣の道場からここまで何キロの距離があるだろう。
しかし、その距離を第一席は移動しきった。
まったく、とんでもない身体能力の老体だ。
「第一席!」
「おお、巴の昔の上司の楓くんじゃな。瀬田はどうした」
「第二席は……」
楓は言い淀む。それだけで、第一席には伝わったようだった。
「そうか。長い付き合いだった」
肉片がくっついていく。そして、それは人の形を取り戻した。
その額に、第一席の剣が突き刺さりかけた。
相手は辛うじて回避したのだ。側頭部に傷跡がある。
「さて、始めようか太古の巫女よ。勝者と敗者が決まった残酷なゲームを」
+++
首都八剣第四席である私は、ある場所で待機していた。
仲間達が戦っている。それに協力したい。そんな思いがある。
護衛はただでさえ数が多いのだ。一人ぐらいいらないのではないか、という思いが強い。
私は、心を無にして集中する。
「第四席」
声をかけられて、私は顔を上げた。
「お呼びです」
私は立ち上がり、護衛主の前に立った。
「退屈しているようですね、第四席」
「いえ、そんなことは……」
図星を指されて、私は内心冷や汗をかく。
「ここには護衛が沢山います。あなた一人が欠けてもそう変わりはないでしょう」
「はっ」
「ならば、町に出て、一人でも多くの人を守りなさい。あなたの力で、あなたの思うがままに」
「よろしいのですか……?」
「適材適所という言葉があります」
護衛主は優しい口調で言う。
「君に座っているだけの空間は似合わない」
「ありがとうございます!」
私は独自のマントを羽織ると、双剣を鞘から引き抜いて、構えた。
「第四席、木下巴! これより独自の行動を取らせていただきます!」
護衛主は微笑んだ。
「行きなさい。あなたの戦場へ」
外へ出て、電話をかける。
「藤子さん、第一席は何処ですか?」
「巴、護衛はいいの? 第一席は国会議事堂前で敵のボスと戦闘中。私はクリエイターを迫ってる」
「なら、私は国会議事堂に向かいます」
「任せた。第二席が亡くなっている」
「瀬田さんが……?」
それは、私にとって衝撃だった。
第二席。その神がかった実力はよく知っていたからだ。
「気をつけて」
「了解!」
私は走る。自らの戦場に向かって。
第七話 完
次回『クリエイター』




