第二席の死
国会議事堂の会議場に赤い何本もの糸が伸びて侵入していった。
それは、議員達の襟首に吸い付くようにくっついた。
一人が手を上げ、マイクを取る。
「超越者の率先的な採用について考えをお聞きしたい」
総理大臣が立ち上がる。
「超越者の問題は我が国固有のものではなく……」
その時、氷が走って部屋中を覆った。
そして、氷は役割を果たしたとばかりに消える。
議員達の首の糸は消え、彼らは地面に倒れ伏した。
テレビカメラは既に破壊してある。
会議場の扉が開いて、一人の古めかしい巫女が入ってきた。
「第二席はどうしたの? お嬢さん」
楓は、冷や汗を流しながら言う。
「そうか。あれは第二席か。強いわけだ」
そう言って、ミカは余裕すら漂う笑みを浮かべている。
「超越者の優遇的な措置。あなたにとっても悪い話ではないと思うけれども」
「超越者が表に出れば混乱が広がる。私達は裏方でいい」
「そう」
ミカは滑稽そうに笑い声を漏らす。
「私は、支配者は超越者……新人類であるべきだと思っているわ」
「人は話し合いで未来をつくる道を選んだ」
楓は、ミカを睨みつける。
「自衛のための戦力はわかる。しかし、自ら戦うための戦力はいらない」
「まったく、平和に毒されて。なら、日本より大きな軍事力を持った相手を敵にした時あなたはどうするの?」
楓は言葉を飲み込む。
「私が支配して、日本を強い国にしてあげる。影から操り、コネを使い、強靭な国にしてあげる。それがこの国を統括する私の役目」
「話にならないわね」
楓は、腕を振った。
氷の剣が次々に空中へと浮かぶ。
それは、ミカへと一直線に飛んで行った。
しかしそれは、ミカの気合に触れるだけで蒸発してしまった。
「じゃあ、始めましょうか。勝者と弱者が決まった残酷なゲームを」
ミカはそう言って、目を細めた。
第六話 完
次回『第一席、動く』




