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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第三十一章 老兵最後の戦い
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大混乱

 慎一郎達が現場にたどり着くと、酷い有様だった。

 人形の炎がショッピングモールに抱きつき、燃やし、仲間を爆発的に増やしている。

 周囲は炎の人形だらけで夏のような熱気が漂っていた。


 そのうち、人形達は慎一郎達に気がついたらしく、飛びかかってきた。

 慎一郎が剣をふるい、数匹を断つ。

 右京が九十九赤華でその核を断ち、勇気は背後の敵に備える。

 小豆は氷を放ち、セレナは炎を無理矢理に消滅させる。

 炎の海の中に、五人は取り残されたかのようだった。


「こんなに、キリがない……!」


 右京の心は既に折れているようだ。


「ちょっとずつでも前進することだよ」


 勇気は飄々とした口調で言う。


「敵の生まれるペースは秒間数十匹。こっちが処理できる数は秒間七匹前後。止まっていたら負け戦だ」


「けど、ここは東京だ」


 慎一郎が言う。


「ここが陥落すれば、日本は混乱状態になる」


 四人が各々戦いながら頷く。


「ちょっと、時間がほしい」


 そう、勇気は言う。


「クリエイターの居場所を探知してみようと思う」


 四人は顔を見合わせる。


「わかった!」


 慎一郎が、胸を張っていった。


「セレナ、小豆、その分負担をかけるぞ」


「いいってことよ」


「本音じゃ悲鳴上げて逃げたいけどね」


 小豆は冗談交じりに言った。

 以前のクリエイターとの対戦。それは、確実に彼らを戦士にしていた。



+++



 国会議事堂には首都八剣の第二席とその弟子達が配置されていた。


「敵影は?」


 楓が通信機器に向けて問う。


「焦らなくてもそのうちくるわよ」


 微笑ましげな第二席の声が返ってくる。

 正直、この人はおっとりしすぎていて調子が狂う。


 混乱を外に漏らさないように、国会は今日も通常運転だ。

 楓は気を張り詰めて周囲の気配を探る。

 しかし、敵の気配はたしかにない。

 ここに至る前に誰かが退治してくれていると考えるべきか。


 楓は祈る。自分の力が活用されないような展開になってくれることを。



+++



「北東一キロメートルに反応あり」


 勇気が、顔を上げる。


「ここから北東一キロメートルに気配がある。悪い気配だ。なんとかできる部隊はいるか?」


 慎一郎は剣を振りながら通信機器に向かって叫ぶ。


「少し考える時間をください」


 短い返事を残して、通信機器は沈黙した。


「さて」


 慎一郎は微笑む。


「いよいよ俺達が踏ん張るだけだぜ」


「だね」


 右京は苦笑交じりに返す。

 その時のことだった。消防車が走ってきた。

 それは人形の壁を打ち破り、中から出てきた消防士達が水を照射し始めた。

 炎の人形は消防車へと近づいていく。

 それを、セレナが強制的に無に返した。


 横薙ぎの水は消していく。

 炎の人形を、何体も。


「任せていいか?」


 慎一郎は問う。


「護衛は欲しいところだけど、まあ、死なない程度にやるさ」


 そう言って、消防士は接近してくる炎に水をぶつけた。


「近くに支援に行ける部隊がいます!」


 通信機から声がする。


「消防車の護衛は任せた! 行こう、クリエイターの居場所へ!」


 慎一郎が高々と言って、五人は駆け始めた。



第五話 完

次回『第二席の死』

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