天衣無縫はいないのか?
楓一行がホテル内を移動していると、声をかけられた。
勝ち気そうな少年と、人見知りが激しそうな少女の二人だ。
「なあ、あんたらの住所見てたんだけど。天衣無縫は来てるんだろう? 久々に挨拶がしたい」
楓が前に立って、対応する。
「ごめんね。翠は地元のゲートの守護のために残ってるわ」
「じゃあ、王剣アラタは?」
少年は訝しげに言う。
「同じく待機」
「なんだよ、二軍メンバーか。やる気ないんだな」
そうぼやくように言って、少年は踵を返す。
「待てよ!」
そう言ったのは慎一郎だ。
「俺が二軍メンバーってのは否定しない。けど、十分役にたつはずだぜ。天衣無縫や王剣だけがうちの人材じゃない」
少年は戸惑うように振り返る。
「お前、名前は?」
「榊慎一郎」
「俺は藤堂鏡志朗。精々、お互い生き残ろう」
そう言うと、鏡志朗は歩み去っていった。
「やっぱりメインメンバーを温存していたら色々言われるものですね」
勇気が淡々とした口調で言う。
「うーん。こればっかりはしゃーない。セレナと私と勇気がいる時点でかなり頑張ってるんだけどね。知名度の問題だ」
「知名度かあ……」
勇気は苦笑する。
「今回の戦いで精々名を上げましょう。私達は弱くはない」
楓の言葉に、一同頷いた。
第三話 完
次回『第三席と第四席と招かれざる客』




