表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二章 冒険を、望んでいた
37/391

旅の終着点

「あ、見て! 滋賀まで五キロだって」


 響が、僕を抱えて走りながら、看板を見て弾んだ声で言う。


「さっきの戦闘で人は殺していないだろうな。ソウルイーター」


「刑事に手を出すと厄介だってのは学んだからな」


 ソウルイーターは飄々とした調子で言う。


「そういうことじゃなくて、誰の魂も吸っちゃ駄目だ」


「しかし、俺の力の源はそれだよ。それともなにかい? 死刑囚が捕まっている刑務所でも襲えってか?」


 僕は思わず黙り込む。

 ソウルイーターは変わらない。

 仲間になったと見えても、邪悪なままだ。

 彼がこれからどれだけの被害を周囲に与えるか、予測できない。

 病院でなにかがおきて、心を入れ替えてくれるといいのだが。


 そして、僕達は滋賀に辿り着いた。

 今回はスマートフォンの地図を使っていたので、ホテルに直行する。

 泥だらけの服は着替えていたので、ホテルの従業員は僕らを快く迎え入れてくれた。


 鍵を受け取り、三人で、部屋の前で集まる。


「とりあえず、睡眠をとろう。もう眠い」


 そういうのはソウルイーターだ。

 そうだ。しばらく僕らは長時間の睡眠をとっていないのだ。


「起きたら玄関に集合。病院を探すぞ」


 そう言って、ソウルイーターは欠伸混じりに自分の部屋に入っていった。


「じゃあね」


 響も微笑んでそう言って、自分の部屋に入る。

 僕も、自分の部屋に入って、ベッドに寝転がった。

 疲労が一気に吹き出してくる。


 眠りに落ちる直前、妹はどうしているだろうかということが、一瞬脳裏をよぎった。

 しかし、それは本当に、一瞬のことだった。



+++



 翌日、僕らはそれぞれ散って、情報を集めた。


「おもい総合病院?」


 学生服の少年が、怪訝な表情になる。


「知らないよ、そんな病院。他の市じゃないかな」


「けど、この市にあるって話なんだよ」


「ごめん、遅刻するから行くね」


 道を行く誰に聞いてもこんな調子だ。

 どうしたものだろう、と思う。


 十二時になると、マクドナルドで集合した。

 ハンバーガーを食べながら、三人で話し合う。


「こうなると情報が怪しくなってくるな……」


 僕はもう弱気になっている。


「もしも私一人なら、私もそう考えたかもしれない」


「あっ……」


「けど、まったく別人で同じ境遇のソウルイーターが同じ病院名を探してこの地まで来た。そんな偶然、ありうると思う?」


「そうだなあ」


 僕は立ち上がり、レジの中年女性に話を聞いてみることにした。


「すいません。おもい総合病院ってどこにあるか知りませんか」


 中年女性は、目を丸くした。


「ああ。私も昔は結構お世話になったわ」


「昔は……?」


「知らないの?」


 女性は、戸惑うように言った。

 その口が、続きを紡ぐ。



+++



 そして、僕らはついに辿り着いた。旅の終着点へ。

 そこは、一面の更地。

 病院は、既に潰れていた。

 誰もなにも言えずに、その場で立ち尽くすしかなかった。



第九話 完

次回『最強の超越者は一般人を名乗る』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ