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守りたい場所のために

「東京、行くの?」


 師のアラタがそんなことを訊いてきたのは雪がちらほらと振り始めた頃だった。

 例年と比べれば少ない、積もるかどうかもわからない雪。

 勇気は、少し躊躇った後に答える。


「ええ。私は首都八剣の第八席ですから」


「東京には行かないって言ってなかったっけ」


「剣士としての欲ですね。私は強くなれる場所を結局選んでしまったのです。そして、探知の力を見出された」


「東京は日本の中心だ。潰れたら酷い混乱になる。頼むぞ」


「ええ」


 勇気は微笑んで答える。


「私と師匠が暮らすことになる町です。きっと、とても楽しいんでしょうね。その日々のために、しばらくの別れを」


 アラタは微笑んだ。


「お前なら大丈夫だ。俺は信じている。っつーか、お前が駄目なら俺でも駄目だ」


「戦闘での直感力なら師匠の方が何段も上ですよ」


「そうかな」


「そうですよ」


 舞台は変わる。東京へと。



第三十章 完

次週『第三十一章 老兵最後の戦い』

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