クリエイター
クリエイターは県北で雑魚をばらまいた後、県南で活動をしている。
もしくは、県南に保険を作った後県北で暴れている。
それが私達の共通認識だった。
いけないことだとわかっているのだが、夜歩きにも慣れた。
慎一郎などは昼夜逆転生活を送っているらしく、底抜けに元気だ。
私は授業を真面目に受けているので若干眠い。
その時、パトカーが私達の傍に停まった。
「君達、なにしてるのかな?」
「まだ学生だよね」
警官達が降りてくる。
(ヤバいな……)
そう思い、身構えていると、勇気が前に出た。
そのポケットから、警察手帳が出される。
「私は首都八剣第八席。園部勇気です」
その肩書に、警官も含めて一同唖然とした。
「県南の見回りが手薄なように感じて対処していました。実際、この周辺には討ち漏らしが何匹もいる」
警官達は顔を見合わせてしばらく目線でやり取りしていたが、そのうち二人して背を伸ばした。
「深夜の見回りご苦労様です」
「我々も通常業務に戻ります」
そう言って、警官達は去っていった。
「ふう。肩書は持っておくもんだね」
勇気がとぼけた調子で言う。
「聞いてない」
慎一郎が呆れたように言う。
「聞かれなかったからね」
勇気はやはりとぼけた調子で言う。
「末席とはいえ首都八剣の一員かあ。そりゃ心強いわ」
と、右京。
私は首都八剣とやらの情報に疎いので今ひとつ状況が掴めていない。
「東京へはいつ行くの?」
「春になったら。師匠には言ってないんだけどね。行かないって豪語した手前もあるし」
そう言って、勇気は苦笑する。
「首都八剣か。凄えな。警官が小さくなってたぜ」
慎一郎も感心したように言う。
「精々感謝しなよ。私がいなかったらこの夜歩きも終わってた」
勇気が薄っすらと微笑みながら言う。
「御尤も」
慎一郎はおどけた調子で返し、前を歩いていった。
一同、その後に続く。
その時、勇気が呟くように言った。
「気配がする」
言われてみれば、確かに微かな気配がする。
しかし、小豆は気取れてないようで怪訝そうな表情をしていた。
「この気配は……クリエイターだ」
勇気の言葉に、一同に緊張が走った。
第四話 完
次回『決戦、クリエイター』




