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呼び出し

 私、セレナは玄関で外出するか迷っていた。

 深夜一時。翠は仕事で外に出ている。

 深夜にうろつくなんて翠への裏切り行為だ。それはわかっている。

 けれども、魅力的な誘いがあったのだ。


 十分ほど、迷う。

 追撃のメールが来た。

 写メも添付されている。

 それは、氷塊が人の形をとって動いている写メ。


 こんな面白いこと逃したら損だ。

 そう思い、極力音をたてないように外に出た。

 深夜の空気は肌寒い。

 春はまだ、遠い。


 深夜の公園に辿り着くと、メンバーは揃っていた。

 慎一郎。右京。勇気。そして誰だろう。金髪にミニスカートの少女が一人。


「誘いに乗ってくれたか」


 ベンチに座っている慎一郎が、立ち上がって握手を求める。

 それに応じた。


「面白そうだと思ってね」


「実際、面白い。俺達二軍には絶好の経験だ」


「私、一軍なんだけどな」


 勇気がぼやくように言う。


「けど、王剣には劣るだろ?」


「それは、まあ……」


「まあ、実物を見たほうが早いだろう」


 そう言って、慎一郎は歩き始めた。

 公園の階段を上ると、草原に出る。

 そこで、その生物は息を吐いていた。

 いや、それを生物と定義していいのかも躊躇われたが、それは確かに生きて動いていた。

 氷の塊だ。


 氷の息を吐いて、自分の同胞を作ろうとしている。


「私の護身用のスキル、氷なんだけどな」


 金髪の少女がぼやくように言う。


「壁も作れるし相手の足場も固めれる。有用なスキルだ」


 慎一郎は淡々とした口調で言う。


「まあ、ふっ飛ばせばいいんでしょう?」


 そう言って、私は手を前へと伸ばす。


「有り体に言えばそうだな」


 慎一郎はスマホで氷塊の写真を撮ってから言う。

 私は炎の塊を頭の中で念じて手を差し出した。

 人を飲み込む巨大な火球ができあがっていた。

 氷塊がこちらに気づき、悲鳴のような声を上げる。


 それに構わず、火球を放った。

 氷塊は、新たな仲間を巻き込んで溶けていった。


「まだだ」


 勇気が言う。

 驚くべきことに、氷の塊は再生しつつあった。

 勇気が腰の鞘から剣を抜こうとするのを、右京が押しとどめる。


「東雲流、九十九赤華」


 そう言って、右京が日本刀を抜くと、その刀身は蛇のように歪んで空中のある一点を突いた。

 それがトドメとなったらしく、氷塊は再生しなくなった。


「核を潰すまで死なない敵か。厄介だね」


 金髪の少女が言う。


「けど、連携して倒すことができた」


 慎一郎が言う。


「核の見出し方を教えてくれないか? 俺達、まだまだ強くなれるだろう?」


 なるほど。今回の招集の趣旨はそこか。

 私はガムを噛みながら考える。

 これは、翠への裏切り行為だ。

 けれども、新たな力を試す場としてはもってこいだ。


 私は迷っていた。

 迷っていたが、まだまだ強くなれるだろうという言葉は甘く心に響いた。



第一話 完

次回『金髪の少女』

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