ミカに関する情報収集
「お手上げってのが現状なのよね」
楓のボヤキに、翠は戸惑った。
「なんか上手く過去の文献が見つかったとかそういうことはないんですか?」
「そもそも、日本に紙があったのかなその時代」
「あー……」
そこら辺は翠も疎い。
ただ、魏志倭人伝には卑弥呼に関する記述があったはずだ。
「見た感じ西暦が五百年にも達していない頃の服装だったけど」
「そうですねえ。布に穴開けて紐で縛るだけですからね」
「エロいよな」
相馬が話題に入ってくる。
「煩悩を捨てろ」
楓は冷たい声で吐き捨てるように言う。
相馬は肩を竦めると自分の机に向き直った。
「石神幽子ならなにか知ってるんじゃないですか?」
「それがね……記憶に混乱があるみたいで」
「混乱?」
「彼女には太平洋戦争時代の記憶も幕末の記憶も戦国時代の記憶もある。けど、それらが膨大すぎて断片的にしか思い出せない感じになってるわ」
「うーん。手がかりなしですか」
「まあ、またすぐ来るわよ」
楓は、ペンの端で自分の顎をかきながら言う。
「奴の目的は、この地のゲートの開放なのだから」
「そうですねえ……」
翠は、椅子に深々と腰を下ろすと、自分のマグカップに入れたコーヒーを飲んだ。
「なんだか、ややこしくなる一方ですね」
「先人もこれをこなしてきた。私達の代で終わることを祈るのみさ」
そう、楓は投げやりに言った。
ソウルイーター事件から始まる一連のゲート攻防戦。
その結末は、未だ見えない。
その時、楓のスマートフォンが鳴った。
着信画面には、響の名がある。
第二話 完
次回『現場検証』




