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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十八章 第三神将は暴れるのがお好き
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凡人の詩

「起きたか、第八席よ」


 第八席は、目を覚ますと道場にいた。

 首都八剣にしか入ることが許されない道場だ。

 恐る恐る、顔を上げる。


 眉間にしわをよせた第一席が、杖をついて立っていた。

 傍には、第三席が寄り添っている。


「はっ」


 第八席は平伏した。

 体が震える。

 悪だくらみは全て露見しているのだろう。

 ならばこれから第八席に下されるのは、罰だ。


「思えば、これまでも有望な若者が何人か不審死した。あれは、お前の仕業かね」


「滅相もない! そもそも、忍者程度相手にできずになにが八剣か!」


「そうじゃのう。お前の行動は紛い物の加入を阻止してくれた側面もある」


 第八席の緊張が緩む。


「初めは、お主は三席じゃったな」


 第一席は思い出話を始める。


(これは……命までは取られぬか?)


 第八席は、緊張が緩むのを感じた。


「はい、記憶のとおりでございます」


「他の人間が駆け上がり、入ってくる中で、お主は五席に落ち、ついに八席までに落ちた」


「お恥ずかしい限りです」


「いや、そういうのはいいんじゃ。ただ」


 刀が、第八席の前に放り出された。


「お主、この十年なにをしておった?」


 第一席にはわからない、と第八席は思う。

 人間には才能がある。

 その限界に、既に第八席は到達したのだ。


 それは既に、人知を超えた領域。

 それ以上は、人外の世界だ。


「抜け。わしにかすり傷でもつけられたら、生かしておいてやる」


 第八席は、震える手で日本刀を取った。

 そして、立ち上がり、鞘から剣を抜く。


 第一席は杖を持ち上げ、第三席に離れるように指示した。

 虹の歩みはこの男には無意味だ。

 ならば、勝ち目があるとすれば?


 第八席が得意とする神速の居合。

 第八席は駆け出した。


 第一席は一歩を踏み出す。


「虹の歩み」


 周囲に十数人の第一席が現れる。


「なっ……」


 戸惑っている時間はなかった。

 その時には、既に杖に入った仕込み刀で第八席の首は宙に飛んでいたからだ。


「二席、欠けた。補充がいるの」


 第一席は杖をついて、自分の席に戻った。


(ああ、結局、全部中途半端なままで終わるのか……)


 趣味もあった。けれども、プロになれる実力は何一つなかった。

 たった一つ残った剣ですら、自分は紛い物だった。

 選ばれた人間は世の中にいくらでもいる。

 自分は、それにすらなれなかったという話。


 これは、よくある凡人の話だ。

 第八席の意識は、闇の中へと落ちていった。



第十一話 完


次回第二十八章大団円『事後処理』

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