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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十八章 第三神将は暴れるのがお好き
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第七席と、第八席と

 車に三人の刺客を乗せて、僕達は車で移動していた。

 運転席には大輝。助手席には僕。後部座席には三人だ。

 一応、魂は奪ってあるので暴れだすようなことはない。


「ん?」


 大輝が、戸惑うような表情になる。

 それで、僕も気がついた。車の移動速度が異様に遅い。

 前の二台の車が、僕達の行く手を阻んでいる。

 そのうち、車はその場に停車した。


 中年男性が二人降りてきて、僕達に近づいてくる。

 彼らは警察手帳を出した。


「この辺りに誘拐犯が出たという通報が出ている」


「車の中をあらためさせてもらってもいいかな」


 僕は青くなる。失神した忍者三人が後部座席には折り重なっているのだ。

 大輝は堂々と、警察手帳を出した。


「おや、見たことがある顔だ」


「どこにでもある顔だろう」


 中年男性は苦い顔になる。


「首都八剣の七席と八席ですね」


 中年男性達の目が見開かれた。

 僕も、驚いていた。まさか、本人達がやってくるとは。

 中年男性達は、刀を抜いた。


「待て!」


 僕は言う。


「ここでは人目が多すぎる。場所を変えよう」


 二人は目配せしていたが、そのうち頷いた。


「わかった。そちらの指示に従おう」


 山奥の公園のあらかたの位置を教え、車に戻る。

 二台の車は走り出した。

 大輝の車も、その後を追うように走り出していく。


「……えらいことになったな」


「面白いこと、の間違いだろう?」


 大輝が意地悪く微笑んで言う。


「どうしてそう思う?」


「お前の目が爛々と輝いているからさ」


 首都八剣とぶつかることは、正直怖い。

 けど、楽しみでもある。相手は強ければ強いほうが面白い。


「楽しむとするか」


「ああ、その調子だ。ヒーロー」


 二人は進んでいく。山奥の公園へ。



+++



 公園に到着すると、首都八剣の二人は車から降りた。

 僕達も、車を降りる。


「賭けをしたい」


 第八席が言う。


「君達が勝てば我々は黙って退こう。しかし、我々が勝った場合は、その三人を引き渡してほしい」


「よく言うぜ」


 皮肉っぽく言って大輝が肩をすくめる。


「殺す気満々って様子に見えるぜ」


 場の空気が引き締まる。

 第七席が穏やかに微笑む。


「それは疑い過ぎというものだよ。我々は若い才能が現れて喜んでいる」


「刺客を送っといてよく言うぜ」


 大輝は僕にだけ聞こえるような小声でぼやいた。


「それでは、やろうか」


 第八席が刀を鞘から抜く。

 第七席も、僕も、それに習う。


「フォルムチェンジ!」


 そう唱えると、フルフェイスのヘルメットとスーツが僕の全身を包んだ。

 立ち会っているだけでわかる。相手が強者だと。

 僕の口は、知らず知らずのうちに緩んでいた。


 大輝の作り出した、巨大な腕が地面を走って、固まっている二人を引き離す。

 そして、大輝は第八席へと直進した。

 これで決まった。

 僕の相手は、第七席。



+++



 大輝は拳を振るい続けていた。

 相手はことごとくそれを回避する。


(ふむ……?)


 大輝は疑問を覚え、後方に引いた。


「あんた、本当に八席か?」


 そう言って、大輝は相手を指差す。


「ああ、そうだ」


「それにしては強いじゃねえか」


「首都八剣は精鋭の集まりだ。強者のみで構成されている」


「ならば、正々堂々とアラタと戦えばよかった」


 第八席の表情が歪む。

 第八席は、前へと駆けた。


「お前さん」


 大輝は呟くように言って、拳を振るった。


「攻撃に転じれる余裕があると思ったのかい?」


 胃液を撒き散らしながら、第八席は後方へと飛んで行った。

 そもそもの攻撃速度と強度が違いすぎるのだ。

 そして、第八席は木にぶつかって地面に落ちた。


「いっけね。内蔵破裂してるだろうな。回復しねーと」


 大輝は慌てて、第八席に駆け寄った。



+++



 第七席とアラタは向かい合っていた。

 横は騒がしいが、二人の間は凪のように静かだ。


「その若さで、よくぞここまで……」


 第七席は感嘆したように言う。


「実戦には事欠かなかったからな。そして今回も、俺が勝つ」


「言ってろ!」


 そう言って、第七席は歩き出した。


(虹の歩み……)


 第七席の体が三人に増える。

 気配が濃いのはどれか。

 察知している間に敵は刀を振るってくる。


 僕はポケットから袋を取り出すと、その中身の薄力粉をまいた。

 それを不条理の力で足場にし、蹴り飛ばして、上空に出る。

 そして、四人の包囲網を抜けた。


 そう、四人だ。

 背後にもう一人いた。

 東雲流の十赤華を使っている。


 本体は、あれだ。

 僕は再び薄力粉をまくと、それを蹴って地面へ向かって急降下する。


「東雲流」


「遅い!」


 相手の上半身を、深々と斬った感触が手に残った。

 そして、第七席は倒れた。

 自分が勝ったのではない。アラタは、そう思う。


(師匠。藤子さん。修行、ありがとうございました)


「フォルムチェンジ」


 防具を解くと、アラタは無言で剣を鞘に納めた



第十話 完


次回『凡人の詩』

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