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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十八章 第三神将は暴れるのがお好き
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第三席と第五席

 巴と藤子は夜の飲み屋に来ていた。

 慣れない席なので、巴は小さくなるばかりだ。


「ほら、なんでも頼んでいいのよ。ここはお姉さんのおごりだから」


「そんな。私も半分出しますよ」


「いいのいいの。遠慮しないで」


 気前の良さに、巴は喜ぶよりも一抹の不安を感じた。


「アラタくんはどうでしたか?」


「まだ粗い。けど、磨けば私達を超える可能性を感じる」


「私もです」


 巴は微笑んだ。弟子が褒められるのは悪い気分ではない。


「あれで結構のんびりした子なんですよ。ピリピリして注意力散漫になってた私にクレープ差し入れしてきたり」


「それ、気があるんじゃないの」


 予想外の言葉に、水を飲んでいた巴は咳き込んだ。


「そんなんじゃないですよ。あの子はそういうのじゃないです」


「わかんないよー」


「婚約者もいるんですよ」


「火遊びしたいお年頃じゃん」


「やめてくださいよ、もう」


「けどね。私は巴ちゃんのジャニーズよりも質実剛健な人が好きだって言ってたの、ああこれかって腑に落ちたわ」


「勝手に腑に落ちないでくださいよ……」


 巴は溜息混じりに言う。


「まあ、恋バナはおいおい聞くとして」


「出てきませんよ」


「注文しましょうか」


「そうしましょう」


 そう言って、二人はメニューに目を通し始めた。



+++



「一生かの地にいるのかと思ってひやひやしたぞ」


「それもいいかと思ったのですが、自分の使命を思い出し戻った次第です」


 第一席と藤子は道場で向かい合って座っていた。


「なにか、得たことはあるか?」


「巴ちゃんが言ってた弟子。あれは逸材ですね。不条理の力をどんどん使いこなしてきている」


「ふむ。結構なことだ」


「しかし、悪い知らせもありまして」


「と言うと?」


「アラタくんの家に刺客が送られています」


 第一席は黙り込み、髭をいじった。


「首都八剣のいずれかの者の仕業と思うかね」


「そこまでは。しかし、ソウルキャッチャーが一人を捕縛したので、時間の問題かと」


「ふむ……」


 第一席は立ち上がり、咳き込みながら日光の差し込む位置に歩いていく。


「お主、巴、新しい風がふこうとしている。その芽を積むことは許されることではない」


「はっ」


「お主も身辺、気をつけるように」


「はっ」


「今日から通常業務に出てもらうがな」


「私、おじいさんの人使いの荒いところ好きですよ」


「馬鹿を言え」


 咳をしながら、第一席は笑った。



第七話 完

次回『不思議な関係』

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