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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十七章 古城跡地の真実(第五部最終章)
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全ての終わりにして全ての始まり

「楓さん、灯火ちゃんを中に入れてくれますか? 出血で意識が朦朧としているようだから早いほうがいい」


 私は少女の体に手を置いたまま、氷の壁に向かって話しかける。


「了解」


 氷の壁が一瞬だけ開き、灯火が入ってきた。


「この子にスキル封印の矢を打って。それで、全部終わる」


「わかりました」


 灯火は肩を小さく震わせて、真剣な表情で頷いた。

 なんだか小動物みたいな動作の子だな、と思う。


 灯火の手に弓が現れ、矢が現れる。

 矢を弦につがえ、引く。

 そして、放たれた矢は少女の腕に見事に突き刺さっていた。


「生かすつもりなの? 甘ちゃんね」


「あなたからは聞き出せる情報がまだまだあると判断した。それに、不老不死の病が本当ならば、殺す方法がない」


 そう言って、私は少女の切断された足に触れる。

 傷口が塞がって、足がくっついた。


「これは……見事なものね」


 少女はそう言って目を丸くした。


「終わりね」


「始まりじゃよ」


 そう、少女は言った。

 その表情は自分の台詞に戸惑っているかのようだ。


「ミカ様。お待ち下さい。ここでの出現は、あまりにも危険」


「それもこれもお前が使えぬのが悪い」


 少女は一人で会話をしている。

 そして、少女の腹部から何者かの頭部が出てきたと思ったら、全身が抜け出してきていた。

 現代人ではないと一目でわかった。

 布に穴を開けて紐で縛るだけの原始的な服。ネックレスのように輝く勾玉。

 その目には、赤い光が輝いていた。


「窮屈じゃのう……少し広くするとするか」


 私は咄嗟に、灯火と少女を庇って風の壁を展開させた。

 そして、氷の壁へと吹き飛ばされた。

 これは、どの属性の能力でもない。

 ただ、力を入れただけ。


 それだけで、楓の結界は跡形もなく弾け飛んだ。


「さて、恐いのう。この中には全てを斬る超越者が複数おる。次の手を打たねばならん」


 そう言うと、ミカらしき少女は空を飛んで去っていった。


「追いかけます!」


 灯火が言う。


「ついてく!」


 私は言う。

 しかし、上空に出た時には、ミカの居場所は何処かもわからなくなっていた。

 戦いは終わった。

 疲弊を残し、傷跡を残し、それでも束の間の平和を得るための、戦いは終わった。



第十話 完



次回『ミカ』 

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