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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十七章 古城跡地の真実(第五部最終章)
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相馬、恭司対ドラゴン部隊

 ドラゴンの四つの口から炎が放たれる。

 恭司は咄嗟の撫壁でそれを受けとめていた。

 しかし、撫壁の恩恵があっても周囲の気温が跳ね上がるような炎だった。

 息が切れたのか、一旦炎が止まる。


 天から光が落ちてくる。

 相馬の銃撃だ。

 しかし、ドラゴンは意に介した様子はない。


「鱗の部分は相当堅いみたいですね」


「ああよ。お前の黒い剣が頼みの綱ってわけだな」


「重圧だなあ」


 ぼやくように言う。


「こんな修羅場、いくつもくぐってきただろう?」


「それもそうですけどね」


 ドラゴンは息を吸い、再び炎を放つ。

 撫壁を立てたままだから凌げたが、熱い。喉の中が乾いていく。


「アイスブリッド!」


 相馬が叫んだ。

 アイスブリッドの六連発。

 三匹のドラゴンが氷漬けにされた。


「今だ!」


 相馬の指示に、頷く。


「電光石火!」


 撫壁を持ったまま、身体能力を爆発的に向上させて一匹に接近する。

 ドラゴンが爪を振るう。それを、撫壁でいなす。

 そして、上半分と違って鱗のない下から黒い剣を振るった。

 血が吹き出す。

 首と口から血を吐き出しながら、ドラゴンは倒れ、動かなくなった。


 その時、氷が粉々に砕け散る音がした。

 三匹のドラゴンの色が変わっている。緑から、赤に。


「仲間の魂を喰いやがった……」


 相馬が呆れたように言う。


「相馬さん、同じ戦法で!」


「了解。つってもアイスブリッドは残弾四発だけどな」


 とても不吉な言葉を聞いた気がしたが、聞こえなかったことにしておいた。


「アイスブ……」


 相馬が叫ぼうとしたその時、三つの首は上空を向いていた。

 ドラゴンの口から放たれる三本の炎の柱が相馬を追いかける。

 相馬は辛うじてそれを避けていく。


「電光石火」


 口の中で小さく呟く。

 上空を向いてがら空きになった首。

 弱点を晒しているようなものだ。


 恭司は神速の動きでドラゴン二体の首を断った。


「また進化してやがる……」


 相馬はおののくように言った。

 確かに、最後の一体は色が紫に変わっている。


 その体が、変化を始めた。

 後ろ足も前足も筋肉で膨れ上がり、伸び、そのシルエットは二足獣のそれとなっていた。


「ファイアブリッド!」


 相馬が唱えて、銃弾を三発放つ。

 鱗のない位置にヒットした。

 しかし、ダメージを受けた様子がない。


「ファイアブリッドを受けてノーダメージだと?」


 相馬が空中で戸惑うように言う。

 その次の瞬間、相馬の足はドラゴンに掴まれていた。


「しまっ」


 言い切る間もなく、相馬は地面に放り投げられる。

 電光石火でそれを回収し、相馬の飛行能力で空中へと移動する。

 敵も、空中で羽ばたいて、こちらを見ていた。


 ドラゴンの指が二人を指す。

 攻撃の前兆か、と考え身構えた二人だったが、違うようだった。


「何故戦う」


 ドラゴンは低い声で言った。


「知能を得たか……」


 相馬が、感心したように言う。


「まず、この汚い空気。自然への汚染は深刻だ。そしてお前ら人間は、仲間同士でも争いあう。こんな汚れた世界に住まう? 我が主の提案を受けとめたほうがマシというもの」


 相馬は黙り込む。

 恭司は、ゆっくりと口を開いた。


「けど、俺はこの世界が好きだ。この世界に暮らす人々が好きだ。大局的なことなんてわからない。けど、俺は俺の好きな人達のために戦える。そうでしょう? 相馬さん」


「そうだな。娘と嫁のためにも踏ん張らんといかん」


「所詮は小物であったか」


「小物の意見を踏み躙って、世界の支配者にでもなったつもりかよ! 小物の意地を見せてやる!」


 そう言って、恭司は相手を黒い剣で指した。

 相馬が空中飛行を開始する。

 相手は手を振り上げて備える。


「相馬さん、すいません!」


「わかった!」


 恭司は相馬を蹴り飛ばし、加速した。

 それは、ドラゴンには予想外のことだったようだ。

 動きが硬直し、その胸に恭司の刃が突き刺さっていた。


「足掻くか、人間」


 ドラゴンが、苦痛に満ちた声で言う。


「ああ、足掻く。みっともなかろうと、愚かしかろうと」


 ドラゴンの腹を蹴って、地上に向かって落ちる。それを、相馬が受けとめた。


「そうか。愚直さこそが理論を覆す究極の一であったか」


 そう言って、ドラゴンは消えていった。


「相馬さん、体は?」


「大丈夫だ。お前は?」


「奇跡的に動くのに支障はありません」


「じゃあ、このまま行くか。石神幽子とやらの居所へ」


「はい!」


 二人は進んでいく。最終決戦の場所へ。



第七話 完

次回『仇』

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