雪の降る日
その日、市は久々に雪を迎えた。
豪雪と言うには程遠く、雪かきする必要がない程度の量だ。
助手席には楓、運転席には相馬、後部座席には私。そんな面子で、車で帰路についた。
その時、物凄い悪寒が私を襲った。
相馬も異常を感じたらしく、路肩に車を停める。
「感じましたか?」
「ああ」
相馬は手短に答える。
「古城跡地が危険だ」
「ゲートを開こうとする勢力ね」
楓は顎に手を当てて考え込む。
そして、溜め息を吐いた。
「私と相馬は室長に連絡を取って古城跡地手前に向かう。翠はワープで皆をかき集めてきて」
「了解しました!」
そう言って、私はワープで移動を始めた。
皆、外出してなければいいのだが。
+++
石神幽子は古城跡地の中央にある草原にいた。
周囲には百を超える人数がいる。
ゲートは、既に開き始めている。
幽子はこの地から、五芒星を逆転させたのだ。
「この地に過去の面影はすっかりないわね」
幽子はぼやくように言う。
定一はからかうように言った。
「過去、とはいつの時代の話で?」
「あなたの生まれる前、とは言っておくわ」
そう微笑む幽子は、まだ学生のようにも見える。
妙な人だ、と定一は思う。
しかし、集団に所属していたほうが定一のようなお尋ね者には得なのだ。
「あなた達にはマシンガンを用意しました! 部隊別に四方に散って敵の侵入を阻みなさい!」
犬の遠吠えのような返事が公園に響き渡る。
定一も歩き始めた。腰に二刀を帯びている。
「あなたも行くの?」
「ソウルキャッチャーが来るか、スキルキャンセラーの側近が来るかはわかりませんが。俺は前線主義なので」
「そう。心強く思っておくわ」
定一は歩き始めた。
(前も化物、後ろも化物だ)
自虐的にそう考えながら。
第三話 完
次回『全員集結』




