黒幕達の会話
「色々駆けずり回ったけど、ここらが限界かな」
そう言った幽子に、木根定一は苦笑顔で答えた。
「ネクロマンサーを殺したのが早計だったのでは?」
「奴は私の体を乗っ取ろうとした」
幽子は冷たい表情になる。
「危険分子の芽は断たねばならない」
沈黙が漂った。
定一は身震いしたいような思いで次の言葉を待った。
「日本刀を新しく発注したそうね。なんで?」
「どこから情報得てんでしょうね。発注しましたよ」
「スキルキャンセラー対策?」
「ま、そんなとこです。俺はあるスキルキャンセラーの家族を皆殺しにして家に火を放ったことがある。一番重要なターゲットがそのスキルキャンセラーだと知らされずに」
幽子は喉を鳴らして笑う。
「極悪人ね。それは恨まれていても仕方がないわ」
「まあ、あなたの命令なんですけどね」
間の抜けた沈黙が漂う。
「言ノ葉灯火と組んでいた時にかち合ったことがある。念には念をです」
「この世界で長生きしているわけだわ」
「どうでしょうね。とどめを刺さなかったのは完全な失策ですから」
「……言ノ葉灯火は惜しい人材だったわ」
「これ以上人材が減る前に、という腹はあります?」
定一は躊躇いがちに聞く。
幽子は、答えなかった。
「ま、決戦が近いというのは肝に銘じておきますよ」
そう言って、定一はその場を去っていった。
残った幽子は、窓から夕焼け空を見上げていた。
第二話 完
次回『雪の降る日』




