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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十七章 古城跡地の真実(第五部最終章)
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それは、いつもと変わりない昼下がり

今週も土曜日更新いきます。

十一話分になると思います。

「弁当注文するぞー」


 室長が言い、超対室の中に紙が回され始める。

 それが一周すると、楓は室長にその紙を渡した。


「ご苦労」


「いえ」


 楓は微笑んでそう言うと、自分の席に戻った。

 その隣に、私、斎藤翠は並んで座っている。


「なんかこの職場にも馴染んだ気がしますねえ」


「あんたが部外者だって言っても誰も信じないだろうねえ」


「部外者は酷いなあ」


「だってあんた、机ないじゃない。部外者だ、部外者」


「痛いところを突くなあ」


「本当なら元の会社に戻してあげたいところなんだけどね……」


 楓は頬杖をついて言う。


「なにをおっしゃりますか」


 そう言って、私は自分の胸を叩いた。


「この身は既に、世界平和のために捧げたつもりです」


「スケール無駄にでけぇな」


「石神幽子も暗躍しているし、隙は見せられませんよ」


 そう言って、私はお菓子の袋を開いて、中身を食べ始める。

 楓も、手を伸ばし始めた。


「平和ですねえ……」


「望まずとも波乱は起こるさ」


 そう、楓は無感情な表情で言う。


「結局、この地のゲートが一番手近なんだろうね。だから皆ここを狙う」


「石神勇人の件の時にある程度開いちゃってますしね」


「まあ、私達は後手に回るしかないわけだ」


「むず痒いですね」


「相馬はどう思う?」


「ん?」


 隣の席の相馬が戸惑うような表情で振り返る。


「今回の石神幽子事件」


「そりゃもう」


 そう言って相馬は両手を上げる。


「最悪だろうな。娘がいるのに死線をくぐるのはこりごりだわ」


「けどあんたはアーティファクトも持ってるし、戦力だけどね」


「そうさなあ。さっさとこんな事件片付けて、花見に行こうぜ」


「いいですね、花見」


 私は前のめりになる。


「まだ一月だけどね」


「四月前には終わってるだろう」


 心音が高くなる。

 そうだ、その頃には決着がついているのだ。

 世界の命運をかけた戦いの決着が。



+++




「第三席よ」


「はい」


 第一席の言葉に、第三席は答えた。

 薄暗い道場で、五人が座布団に座っている。

 誰も座ってない座布団もあわせると、八個。

 首都八剣の集合所だった。


「あの地でまたゲートを巡る攻防が起ころうとしているらしい」


「ああ、あれですか」


 第三席、と呼ばれた女性は滑稽そうに笑う。


「いつも到着する前に解決してる場所ですね。今回も彼らに任せれば良いのでは?」


「彼らは一般市民の協力を得て戦っておる。わしらが動かんのは怠慢だ」


「……そろそろまた決戦があると?」


 女性は目を細める。

 第一席は、頷いた。


「今はまだ、可能性の段階でしかないがな。なにかあれば、お前が出てほしい」


「大丈夫ですかねえ。首都の防衛も結構大変なのに」


「なんとか誤魔化すさ」


 そう言って、第一席は茶をすすった。


「わかりました」


 第三席が立ち上がる。


「第三神将藤原藤子。異常が発生次第その地に向かいます」


 首都八剣は、三席から実力の差が段違いになる。

 なので、三席から上は神将を名乗ることを許されている。

 しかし、その実力にしてはその外見は可憐だった。


「うむ、任せた。時に第三席よ」


「なんでしょう?」


「将星、という言葉を知っているかね」


「……? 星には明るくないですね」


「将星の下に生まれた人間には人材が集まってくる。あの中原楓という娘。あるいはそうかもしれん」


「確かに、彼女のコネは尋常じゃない」


「飲み込まれずに帰るように」


「了解しました」


 弾んだ声で言って、第三席は道場を後にした。



第一話 完

次回『黒幕達の会話』

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