色々終わって明日が来る
「疲れてそうね」
楓が、超対室で私こと翠の顔を見るなり言った。
「最近は私生活で色々あって」
頬をかきながら言う。メイクが失敗していただろうか。
「私も色々あったわ。気疲れした」
「年始からこれでは先が思いやられますね」
「そうね。けど、健康的だわ。事件に追われるわけじゃなく、日常の中で振り回される」
「そうですね。最終的にはそうありたい」
「先代も、先々代も、その前の人達も、そう思いながら日常を過ごしたんだと思うわ」
「……スキルユーザーは今この瞬間にも生まれてますもんねえ。思うんです。魂さえ奪わなければ、ソウルキャッチャーという存在は必要なのではないかと」
「黙っておくことだ。ソウルイーター事件で皆敏感になってる。危険思想と思われかねない」
「そうします」
「で。平和は楽しかったかい。ソウルキャッチャー」
「ええ。恭司と喧嘩もしましたが、それを除けば夢のように」
「備えることだ。敵はネクロマンサーの作った兵隊を何人も持っている。石神幽子が石神勇人の意志を継ぐ者ならば、いつ古城跡地が戦場になるかわからない」
「……終わりませんね」
「終わらないんだよ。こんな大きな事件が何度も重なるのは私も経験にないことだけれども。あるいは、これも、スキル主人公の効果なのかもしれない」
「はた迷惑だなあ……」
「ま、誰もが自分の人生の主人公だから、誰のせいとは言わないが」
楓はそう言って、コーヒーを一口飲む。
「含みのある物言いですね」
「それは僻んだ見方さね、ソウルキャッチャー」
今日も一日は過ぎていく。
「んじゃ、私パトロール行くから。ギャルゲ貸してくれてありがとう」
「いえいえ。頑張ってください」
穏やかな一日が過ぎていく。
その先にあるだろう決戦に、私は身震いした。
第二十六章 完
今週の更新はここまでです。
次回は幽子との決戦が描かれる予定です。




