エロゲーハンター恭司 逆襲編
「邪魔するぞ」
僕は家に入るなり、翠の部屋に向かった。
そして、DVDの棚を調べる。
「えーっと。これとこれとこれとこれは性交のシーンがある奴だ。これはキスシーンがある」
僕はそう言って、翠を振り返る。
「捨てるよな?」
「捨てないわよ」
翠は腕を組んで、冷たくそう言っていた。
「それはロマンス。男が下半身を満たすために作るエロとは違うの」
「そこの認識が君は間違っている」
そう言って、僕は立ち上がって翠を指差す。
「シナリオも、BGMも、イラストも。皆が努力した結果が一作一作なんだ。それを否定する権利は君にない」
「ならエロシーン抜きにして作ればいいじゃない」
「……この業界も今苦しいからそういうのは大手しかやれない」
沈黙が漂った。
僕達は向かい合う。
翠は、溜め息を吐いた。
「わかったわ。捨てなくていい」
「本当か?」
「私に布教しなければいいわ。勝手にやって」
「ありがとう、翠。わかってくれたようで助かる」
僕は翠に手を差し出す。
翠は親指だけを握って、軽く握手をした。
こうして、エロゲハンターの逆襲は終わった。
+++
「エロゲねえ……」
翠は溜息混じりに言って、恭司の部屋で趣味の品を観察し始める。
「あれ、これアニメになってなかったっけ」
「うん、なってる。アニメじゃ一人のシナリオしかやらなかったけどな」
「他のルートもあるの?」
「沢山のルートがあるのがエロゲの魅力だよ」
「……ちょっとこれ、貸しなさいよ。恭司の陰部触った手で触った品かと思うと入れる袋もほしい」
「だから、泣きゲーだからそういうんじゃないの!」
エロゲ趣味は中々理解されそうにない。
第九話 完
次回第二十六章大団円『色々終わって明日がくる』




