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決定的な一撃

 血の跡は点々と続いていき、ある一点で止まった。

 シャッター街から少し離れたアパートの一室だ。

 楓が部屋の扉をノックする。

 反応はない。


 楓が扉に手を当てた。

 氷が広がっていき、扉を包む。

 そして、扉は粉々になり、風に乗って飛んで行った。


「警察よ。抵抗した場合は強硬手段を取らせてもらうわ」


 そう言って、楓は部屋の中に入っていく。

 テレビの音声が聞こえてくる。

 後藤寺文雄が、そこにはいた。


「……どういう手品かな」


 文雄は苦い顔だ。


「猫を捕まえようとした時に手を強く引っかかれたでしょう?」


 楓は腕を組んで言う。


「血の跡が滴っていたのよ。お粗末な結末ね」


「そうか、そうか。奴らは、本当に計算外だ……」


 そう言って、文雄は笑った。

 その肩から、その膝から、手が生えて伸びた。

 それは、楓の氷によって防がれる。

 楓の氷は不思議だ。文雄の手が触れた途端に燃やしたように蒸発させる。


「鬱憤ばらしに殴ってもいいかな」


 私は淡々とした口調で言う。そして、力を込めて手を握った。


 跳躍して楓の氷の上へ飛ぶ。

 肩から手が伸びてくる。それは、炎によって燃やされた。私のではない。思い当たる節は一つあった。

 そして、炎を纏った拳で、文雄の頭を思い切り殴っていた。

 文雄の頭が大きく回転する。

 それは、決定的な一撃だった。


 その頭が、ふと体から切り離された。

 氷の刃だ。

 そして、頭は氷漬けにされて、保管された。


 体がバラバラの破片になって飛び散っていく。

 楓が氷の膜で部屋中のものを包むと、それは燃えるように蒸発していった。


「響ちゃん」


「はい」


 私も炎を空気中に舞わせ、細胞を焼いていく。


「ネクロマンサーの方はこれでひとまず決着か」


 そう言って、楓は氷漬けにした頭を拾う。


「どうするんで?」


「サイコメトラーに見てもらう。石神幽子の情報が入ってるだろうから」


「事件はまだ終わってないんですね……」


「うん、果てしないさ」


 そう言って、楓は氷を消した。目に輝いていた赤色が消え、茶色に戻る。


「で、お兄ちゃん、いるんでしょ?」


 私はそう言って周囲に声をかける。


「あれぐらい私でも蹴って避けられたわよ」


 返事はない。


「まあ、守られる立場も悪くないもんだ」


「私ってゴリゴリの前衛タイプなんですけどね」


 ぼやくように言う。

 その時、なにか違和感があった。

 その正体を、私は結局見つけることができなかった。



第七話 完


次回『復活』

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