足が棒になるクリスマス
中原家のクリスマスパーティーは穏やかに、暖かく、進められた。
有栖のケーキ入刀にそれぞれへ充てられたプレゼントの開封。
大人は酒を飲み、娘はジュースを飲む。
「私もお酒飲みたい」
「あと数年我慢しな」
そう言って、相馬がぐりぐりと有栖の額を押す。
そうして、有栖がはしゃぎ疲れて寝た時のことだった。
「二人目、作るかー」
私はソファーに座って呟くような小さな声で言った。
勇気のいる一言だった。
「お。その気になったか」
立ってチャンネル操作をしていた相馬が、ソファーに座って私の肩を抱く。
「私も赤ちゃんの世話してみたい。そこは節子がやってたからね。大変なんだろうなあ」
「二人で乗り越えられるさ。お前が産休に入っても、英治が代わりに復帰したしな」
「相馬みたいに背が高いといいな」
「男の子と決まったわけじゃないぞ」
「けど、有栖は弟がいいって言ってた」
私は、相馬に体重を預けて言う。
「あの子の言うことは、なんか当たる気がするんだ」
「それはスキルユーザーとしての勘か?」
「女の勘だよ」
「そりゃ敵わないな」
相馬はそう言って、私の髪に触れる。
「それじゃ、行こうか」
「うん、行こう」
そして私達は、外へ出て、大抵のホテルが満室だという事実に閉口したのだった。
「この田舎のどっから出てきたんだこの数のカップル!」
「相馬、今日は諦めよう……」
「いや、俺は諦めない!」
「野獣だね」
二人は夜の町を進んでいく。
第十話 完
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