ネクロマンサー
私が確認したところ、超対室のお抱えネクロマンサーの手配は既にされていた。
名前は、加藤良輔。
彼が英治をチェックすることになるらしい。
後は、待つだけだ。
相馬の涙を、不意に思い出した。
英治のことばかりを考えている私は、確かに彼の運命の人ではないのかもしれない。そう思った。
責められたことではないのだ。
なら、英治は私の運命の人なのだろうか。
それも違う気がする。
プリテンダーが脳裏に反響する。
私の運命の人は何処にいる?
そんなことを考える。
結婚もしている身で。
相馬とも微妙にすれ違っている中で、良輔が訪れる日がやってきた。
相馬は、なにも言わなかった。
英治とのデートについても、彼のために奔走していることにも。
それが、地味に辛かった。
良輔と英治は対面する。
そして、一時間ほど話した後で、良輔だけが出てきた。
「これは見事な術ですね」
一言が、それだった。
彼は案内されて、超対室の応接間に通される。
その向かいに、私と室長が座った。
「記憶もしっかりしている。術の行使も支障はない。理論が破綻しているということもない。見事な蘇生術です」
「それでは、このままでも問題ないと?」
室長が躊躇うように言う。
良輔は、首を横に振った。
「ネクロマンサーにとって、復活させた死体は操り人形のようなものです。まず、その繋がりを断たなければならない。けど、繋がりを断てば人形は死体に戻る。八方手詰まりといった感じですね」
「あなたが英治を蘇生させれば解決するんじゃないですか?」
私の質問に、良輔は少し渋い顔になった。
「できれば、もうやっています。あこまで完全な蘇生は珍しいと言ったのはそのためです」
「なるほど……」
「もしも、彼の生命エネルギーを保存している人間がいたら、事態は解決するのですが……」
私は立ち上がっていた。
「大輝!」
叫び声が応接室に響き渡る。
元ソウルイーターの彼なら、英治の魂を持っているはずだ。
私は慌ててスマートフォンを取り出し、電話をかける。
英治は復活するかもしれない。
復活したら、どうなる?
私は相馬と、今の関係のままでいられるのだろうか。
迷いは、一瞬。
私は、英治の幸せを望む。
私はコール音を聞きながら、焦れるように大輝の着信を待っていた。
第六話 完
次回『ソウルキャッチャー』




