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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十四章 プリテンダーを聞きながら
294/391

亀裂

 家に帰ると、料理ができあがっていた。

 なんだろうと思うと、エプロン姿の相馬と有栖と鉢合わせした。

 無言で写メを撮る。


「なんだよ」


 相馬は不可解気な表情で訊く。


「シークレットレアスチルゲット」


「馬鹿言ってら」


「そうだよ、馬鹿なんだよ」


 そう言って、私は涙をこぼした。

 相馬が、ゆっくりとした動作で私を抱きしめる。


「馬鹿なんかじゃないさ。こんなこと、誰にも予想できることじゃない」


「うん」


「ママ、どうかしたの?」


 有栖が不思議そうに問う。


「ううん。ご飯食べましょう」


 そう言って、私達は家族の晩餐を楽しんだのだった。




+++




 夜。

 三人でソファーに座ってテレビを見る。

 有栖は睡魔に負けて、相馬の肩に頭を預けて寝ている。


「英治と面会してきたよ」


 心音が高くなる。


「そうか」


 相馬は、そうとだけ言う。


「それだけ?」


 私は呆れ混じりに言う。


「幼馴染だ。話したいことはあるだろう。これも、神様が与えてくれた機会だ」


「そうだね。あんたは節子がいればそれでいいんだ」


「なんだよ、それ」


 冷静な相馬が気に食わなかった。

 恋敵が現れて少しは焦ってほしかった。


「なに? この前のカラオケ。涙なんて流して。あんたの運命の相手は節子だったんだろうけど、付き合わされる私が迷惑だわ」


「そんなこと……考えてないよ」


 相馬は俯いて、手を組む。


「なら、なんで泣いたの?」


「そうさなあ……」


 そう言って、相馬は天を仰いだ。


「まあ、言い辛い話だわな」


「話しなさいよ」


「知ってるだろ。男は見栄を張るんだ」


「女だって見栄を張るわよ」


「ワインでも飲もう」


 そう言って、相馬は有栖を抱き抱え、寝床へ連れて行く。

 その日のワインは、少しも美味しくなかった。



第四話 完

次回『デート』

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