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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十二章 魔法少女は夢を見ない
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剣術少年は穏やかに過ごしたい

 それは放課後の学校だった。


「遠野先輩!」


 遠野アラタは、呼び止められて振り向く。


「ん? なに?」


「これ、読んでください!」


 そう言って、アラタを呼び止めた少女が手紙を差し出す。


「ああ、俺、彼女いるから……」


「いえ。これは、どうやれば強くなれるかの質問です」


「そういうことなら」


 そう言って、アラタは手紙を受け取る。

 そして、その場を去った。


「下心があるんじゃないかなぁ」


 共に歩いていた友人がぼやくように言う。


「下心?」


「お前が弟子を取って毎日修練しているのは今となっては有名な話だ。自分もそこから始めよう、なんて奴も出るんじゃないかね」


「強くなろうとする奴を俺は差別しないよ。俺を強くする糧となった人々へのせめてもの礼儀だ」


「律儀なことで」


 呆れたように言う。

 その口調には、少々の嫉妬が見える。

 学校で、アラタのポジションは明確に変わっていた。

 夏のインターハイ剣道部門で優勝したのだ。


 地方新聞でも取り上げられ、アラタは今や一躍時の人となっていた。

 友達の反応も様々で、嫉妬じみた反応が増えたのが戸惑いを生む。

 アラタはなにも変わっていない。肩書が変わっただけだ。

 だというのに、周囲のアラタを見る目は変わってしまったのだ。


 これならば仙人のように過ごしたほうがマシだな、と思う時もたまにある。

 もしくは、念願の旅人生活。


 そんなことを考えていると、窓ガラスが割れた。

 アラタは刀を鞘ごと移動させて窓を割った元凶を受け止める。

 それは、魔力で作られた矢だった。


「……?」


 戸惑っていると、風切り音が近づいてきた。


「俺から離れて逃げろ! 誰かが矢を放ってる!」


 友人は真っ青になって廊下を走っていった。

 刀を抜き、構える。

 鞘に刺さった矢はいつしか消えていた。


 魔力の矢。


(そうくるか)


 そう思いつつ、アラタは飛来する矢を切り刻んだ。

 そして、刀を鞘にしまって学校の内部に逃げ込む。


 角度からして射撃距離は近くない。

 学校を壁にすれば逃れられないものではなかった。


「一体なんだってんだ……」


 スマートフォンを起動し、楓に連絡を取る。


「楓さん!」


「なんだい」


「なんか矢で狙撃されたんですが!」


「まさかダメージ受けちゃいないだろうね」


「鞘で防ぎました」


「上等。流石インターハイ優勝者」


「お世辞はいいですから」


「うん。教えよう。今、この町では異変が起きている」


 楓は、淡々とした口調で言った。



第二話 完

次回『魔法少女と少年は出会う』

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