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無残

 あやしい家を見つけるのは簡単だった。

 道場のある家はあるかと聞いて回ると、簡単にわかったのだ。

 そして、そこの人の出入りを見ていると、門下生が何人もいることがわかった。


 その中に、スキルユーザーがいることは確実なのではないかと冬馬は思った。

 今は、この地に潜伏する反抗勢力に対して一つでも手土産がほしい。


 そして、冬馬は家から出てきた少女の後をつけることにした。

 少女は大型スーパーで買い物を済ませ、家へ帰っていく。

 あまりにも日常の一ページ過ぎて、冬馬は少し拍子抜けした。


 そして、彼女が家の扉を閉めると、スキルを使うために力を溜めはじめた。

 光の剣が伸びていく。

 それを一直線に振り下ろせばそれで終わりだ。


 そう思った瞬間、家の扉が開いた。

 光刃が飛んでくる。

 レーザーが二本放たれ後ろのコンクリート塀を焼く。

 そして、最後に、一人の女性が冬馬の前にと立ち塞がった。


「知ってますか? ボスからは逃げられない。これ、ゲームの常識です」


 おっとりした口調でそう言って、剣を構える。


「くっそお!」


 冬馬はそう言って、光剣を振り下ろす。

 その次の瞬間、冬馬は体の至る所を突かれて倒れていた。



+++



「ありゃー、こりゃ駄目だな」


 アラタはしゃがみ込んで、そう呟く。


「無理ですか」


 吹雪が困ったように言う。


「翠さんクラスに治癒が得意な超越者がいれば可能なんだけど、俺のは付け焼き刃だからなあ。脳天やられて何分も経っている遺体になにもできんよ」


「……正当防衛ですよね?」


「過剰防衛だととられると見るがね」


「まあ、超越者の犯罪は特殊ですから、これも例外として処分されるでしょう。遺体目立つし一時的に埋めときます?」


「お前って結構パスってるのな……」


「慣れですよ。アラタくんだって動じてないじゃないですか」


「それにしてもこいつ……なにがしたかったんだ?」


「反抗勢力がまた芽吹いているのかもしれませんね。目立っている分、注意が必要ですよ」


「そうだなあ……注意か」


 一人が欠けても今日も一日は過ぎていく。

 いつもと変わりない色で。



第十話 完

次回第二十一章大団円

『それは慌ただしかった冬休みの終わり』

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