無残
あやしい家を見つけるのは簡単だった。
道場のある家はあるかと聞いて回ると、簡単にわかったのだ。
そして、そこの人の出入りを見ていると、門下生が何人もいることがわかった。
その中に、スキルユーザーがいることは確実なのではないかと冬馬は思った。
今は、この地に潜伏する反抗勢力に対して一つでも手土産がほしい。
そして、冬馬は家から出てきた少女の後をつけることにした。
少女は大型スーパーで買い物を済ませ、家へ帰っていく。
あまりにも日常の一ページ過ぎて、冬馬は少し拍子抜けした。
そして、彼女が家の扉を閉めると、スキルを使うために力を溜めはじめた。
光の剣が伸びていく。
それを一直線に振り下ろせばそれで終わりだ。
そう思った瞬間、家の扉が開いた。
光刃が飛んでくる。
レーザーが二本放たれ後ろのコンクリート塀を焼く。
そして、最後に、一人の女性が冬馬の前にと立ち塞がった。
「知ってますか? ボスからは逃げられない。これ、ゲームの常識です」
おっとりした口調でそう言って、剣を構える。
「くっそお!」
冬馬はそう言って、光剣を振り下ろす。
その次の瞬間、冬馬は体の至る所を突かれて倒れていた。
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「ありゃー、こりゃ駄目だな」
アラタはしゃがみ込んで、そう呟く。
「無理ですか」
吹雪が困ったように言う。
「翠さんクラスに治癒が得意な超越者がいれば可能なんだけど、俺のは付け焼き刃だからなあ。脳天やられて何分も経っている遺体になにもできんよ」
「……正当防衛ですよね?」
「過剰防衛だととられると見るがね」
「まあ、超越者の犯罪は特殊ですから、これも例外として処分されるでしょう。遺体目立つし一時的に埋めときます?」
「お前って結構パスってるのな……」
「慣れですよ。アラタくんだって動じてないじゃないですか」
「それにしてもこいつ……なにがしたかったんだ?」
「反抗勢力がまた芽吹いているのかもしれませんね。目立っている分、注意が必要ですよ」
「そうだなあ……注意か」
一人が欠けても今日も一日は過ぎていく。
いつもと変わりない色で。
第十話 完
次回第二十一章大団円
『それは慌ただしかった冬休みの終わり』




