正月
「あけましておめでとうございますー」
相馬、楓、有栖がアラタ邸の門をくぐる。
「あけましておめでとうございまーす」
翠、恭司、セレナもアラタ邸の門をくぐる。
そして、門は閉じられた。
女性陣が手分けして料理と皿を並べていく。
会話も軽やかで、姦しいとはこのことだと思う。
セレナは箸や皿を並べる役だ。
一番簡単な役と言えた。
「いやあ、賑やかだなあ」
そう言うアラタの父は日本酒で既に酔っている。
「お義父さん、お注ぎしますよ」
そう言って、吹雪が酌に回る。
「で、皆さん超対室とかいうとこの所属なのかい?」
「一般人も混じってますが、それがらみの繋がりですね」
恭司が穏やかな口調で言う。
「響ー、手伝おうかー?」
アラタが手持ち無沙汰に言う。
「テーブル拭いて」
響が手短に言う。
アラタは台拭きを取りに立ち上がった。
「今から尻に敷かれてら」
相馬が滑稽そうに言う。
「いやー、俺は結構亭主関白でいきますよ」
そう言いつつ、アラタはテーブルを拭いていく。
「無理だと思うなあ」
そう冷静に言うのは重箱を運んでいる翠だ。
「新年って感じだなあ」
アラタの父は上機嫌で言う。
「で、アラタ。誰を嫁にするかは決まったのかい?」
空気が凍った。
数人の動きが止まる。
「響だって決まってるだろ。耄碌したか親父」
「そうか、ならそれでいい」
父は満足気に微笑んだ。
「お義父さん。追加の熱燗用意するので少し待ってもらってもよろしい?」
吹雪が、苦笑交じりに言う。
「ん、かまわんよ」
父は満足げに頷いた。
「誤解してない?」
響が、冷たい声で言う。
「あなたは私だって決めていても、私はあなたと結婚するとは決めてないんだからね」
その一言で、アラタは氷を背中に入れられたような錯覚に陥った。
「頼むよ~、響~。お前がいないと俺は駄目だ」
「知らない」
笑い声が上がる。
平和な正月は過ぎていく。
それは冬休みの終わりも近いことを物語っていた。
第五話 完
次回『犯人捜し』




