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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十章 物部恵梨香奪還作戦(第四部最終章)
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灰色の決着

 寒空の下、警察のパトカーが基地から逃げてきた相手を何人も運んでいく。


「もぬけの殻だったそうですよ」


 恭司が、躊躇うように言う。

 相馬が苦い顔になる。


「つまりまだ敵はいるってことか」


「なんの話?」


 吹雪が話に加わる。

 心なしか、元の仲間よりこちら側に近い位置に立っている気がした。


「あんたらが確かめた最後の扉がもぬけの殻だったって話さ」


「ああ。コンディション整えてボス戦かと思ったら誰もいないんで肩透かしでした」


「今回の敵は規模が大きすぎる」


 相馬は渋い顔で言う。


「こんな超越者集団、何度も揃えられては困る」


「そうですねえ……まあ、私は負けませんけどね」


「俺だって負けねえよ」


「その意気です」


「変な気分ですね」


 地面にあぐらをかいているアラタが言う。


「俺達は危機を感じているのに、世の中の大半の人間は平和だなってこの同じ空を見上げてるんだから」


「下を見てソシャゲしてる人のほうが多いよ」


「吹雪さん。俺の感傷台無しになりました」


 緊張が緩むような、笑い声が上がった。




+++



 恵梨香が担架で運ばれていく。

 その横に、私は並んで進んだ。


「たくさん、たくさん、話しようね」


「呑気ね。あなたは私の夢を壊した天敵でもあるのよ」


「けど、友達でもある」


 恵梨香は黙り込み、そして、苦笑した。

 そして、彼女は救急車に運ばれ、そのまま去っていった。


「話したいことは話せたか?」


「うん、まあ」


 恭司だ。気まずいままだったので、曖昧に答える。


「俺、結構働いてるよな?」


「まあ、恭司がいなかったら私、何度も死んでるね」


「趣味ぐらい許してほしいんだよなあ……」


「私とユーチューバーとどっちが大事?」


「翠」


 即答だった。


「なら、私も我慢するわ」


 溜息混じりに言う。


「ただ、私がいる時に流したり、私に布教しようとしたりしないでね。そん時は家行くのやめるから」


「りょーかい」


 恭司はそう言って、天を仰いだ。


「綺麗だぜ、空」


「知ってるよ」


「一緒に見よう」


「星座知ってるの?」


「うろ覚えだけどな」


 二人で肩を並べて座る。

 取り返した日常が、たまらなく愛しかった。





第八話 完

次回第二十章最終回『特殊部隊』

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