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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十章 物部恵梨香奪還作戦(第四部最終章)
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剣に生き、剣に死ぬ

 アラタは最下層を走っていた。

 それにしても、何者だろう、この吹雪という女。

 全力で走っているのに、息も切らさずついてくる。

 男女では歩幅も筋肉量も違う。それを、この女性はいとも容易く飛び越えている。

 楓が息切れしているのが可愛く思えてくる。


「フォルムチェンジ!」


 アラタは唱えた。

 その瞬間、アラタはフルフェイスのヘルメットとスーツに身を包んだ白一色の剣士になる。手には長刀が握られている。


「この狭い通路でその長剣は邪魔っけじゃないかなあ」


 吹雪がのんびりした口調で言う。


「御尤も。最初はこの長さなんだよ」


 そう言って、アラタは刀の長さを整えた。

 そして、最下層の一番奥の扉が見えてきた。


 普通に考えれば、敵のボスの間。

 その部屋から、男が一人出てきた。


「俺は木林真一。見た顔もいるな」


 そう言って、真一はアラタを見て微笑む。


「あんた一人で俺達三人を相手にしようってか?」


「どうかね。見たところ近接戦闘と遠距離戦闘の組み合わせだ。接近戦をしているところに遠距離攻撃は自滅の恐れがある」


 そう言って、真一は手に剣を呼び出した。


「つまり、悪くて二対一ってとこだ」


「残念だが、その悪くて、になりそうだぜ」


 吹雪が、アラタの声に答えるように鞘から剣を抜いた。


「綺麗な嬢ちゃんだ。こんな場所じゃなければ口説いていたぜ」


「あら、嬉しい。私、お世辞は好きですよ」


「世辞じゃねえって」


「まあ、どちらであっても、あなたは死ぬんですけどね」


 そう言った時、吹雪は既に真一の頭上にあった。

 三連突。

 真一はそれを全て弾く。

 しかし、前方から接近するアラタまでは剣では対応できなかった。


 アラタは横薙ぎに真一を斬る。

 刀と鉄がぶつかりあう音が響き渡った。


 落ちてきた吹雪が片手で掴み取られて、アラタに投げつけられる。

 そして、トドメの一撃が繰り出されようとした。

 氷の壁に阻まれて、その一撃は防がれた。


 アラタも、吹雪も、慌てて体勢を整える。


「吹雪さん」


「なに?」


「この敵、俺に譲れ」


「二対一で死にかけたけど?」


 吹雪は苛立たしげに言う。


「相手が強ければ強いほどいい」


「あなたが譲りなさいよ」


「嫌だね」


「じゃあ、しょうがない。二対一だ」


 氷が数度の体当たりで破られた。


「三秒、稼いでくれる?」


 吹雪が言う。


「奥の手でもあんのか?」


「ええ。とびっきりのが」


 おっとりとした口調で、自信満々に言う。


「貸しにしとくぜ!」


 そう言って、アラタは駆け出した。

 刀を振り下ろす。

 それを、相手がチョキのポーズで受け止めようとしたところで足蹴りにシフトする。

 そして、相手は体勢を崩した。


「今だ!」


「我は世界の理に反する者なり!」


 吹雪が叫んだ。

 その次の瞬間、真一の体は一瞬で十箇所の突きを受けていた。

 たまたま鉄化していて防いだ部位もある。

 しかし、喉を突かれたのは致命的だった。


 血が溢れ、周囲にその臭いが漂い始める。


「今のは?」


「東雲流奥義。十赤華」


「一瞬で十箇所も突くとか殺意高すぎんだよなあ……」


 アラタは呆れたように言う。


「あんたとは戦いたくないよ」


 珍しく、アラタは弱気に言う。


「私はあなたと戦ってみたくなりましたけどね」


 そう言って、吹雪は剣を持つ手を下ろす。


「さあ。多分次が最後の扉だ」


 そう言って、楓は前の扉を指差した。


「見てやろうじゃないか。奴らの偶像を」


 アラタも、吹雪も、頷いた。



第六話 完

次回『エリー、恵梨香』

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