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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十章 物部恵梨香奪還作戦(第四部最終章)
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役割分担

「強い奴も手柄首も奥の層にいる。俺は奥の層へ行く」


 と、アラタ。


「面白いですね。ご一緒しますよ」


 と、吹雪。


「剣士二人で組んで遠距離攻撃の敵と当たったらどうすんだ」


「躱して斬るだけです」


 吹雪はリーダー格の男に、のんびりとした口調で過激なことを言う。


「私がついていくわ。奥の層は確かに強敵も手柄首も多い」


 楓が言う。


「私は、上層へ行きます」


 私は、恭司を抱えて下降しながら言う。


「あの子なら、絶対に仲間を助けようとするはず。上層へ行きます」


「私情だね」


 楓が、面白がるように言う。そして、言葉を続けた。


「だが面白い。行きな」


「はい!」


「じゃあ俺も上層だな」


 恭司が言う。


「お供しますよ」


 そう言うのはシンシアだ。

 そうやって、各々の持ち場は決まっていったのだった。



+++



「なんか最近影薄いんだよなあ」


 大輝はぼやきながら、通路を進む。


「ねえ、存在感が増す道具出してよぉ」


 声真似をしながら、大輝は手を振る。

 その度、血飛沫が舞った。

 大輝は戦っているのだ。


 真剣にならずとも敵を下せる。

 大輝の実力は既に一人の戦士の範疇を大きく逸脱しつつあった。


「おお、なんてことだ。我が同胞が……!」


 男が通路に出てきた。

 大輝は風の刃を放つ。


 それを、風の壁で相手は無効化して、同時に火球を放った。

 大輝はそれを、炎の壁で無効化する。


「ふふ、ふふふ……なるほど。ソウルキャッチャーにしてその無慈悲さ。大輝とは君のことだな」


「おっ。お前、俺のこと知ってんのか」


「裏社会じゃ有名さ」


「いいねいいね。ここまで暴れて無名だってんなら悲しくってないさ」


 賢者の石攻防戦で会ったことは忘れられているようだが。

 これは本格的に影が薄くなっているのかもしれない。


「だがここが君の終着点だよ」


 男は手を大きく広げて大輝に向けた。

 四本の指から四色の光が掌に向かって流れ込んでいく。

 そして、それは光となって輝き始めた。


「エレメンタルカラーズ、か」


 大輝は呟くように言う。


「ああ、そうだ。これは相殺できまい!」


「そうかな。結局は、四つの属性を近い出力で放てばいい話なのだろう?」


「簡単に言うが、それが難しい」


 大輝は手を広げて、相手に向けた。

 そして、感じる。

 四本の指から同量のエネルギーが掌に向かって集まっていることに。

 エネルギーはせめぎあい、時に混ざりあい、時に相殺しあいつつも、最後には調和を得て光となった。


「ば、馬鹿な……」


 男は狼狽していた。それはそうだろう。この技は一朝一夕でできるスキルではない。

 しかし、ソウルキャッチャーの特性がそれを可能にした。


「俺の中には沢山の人間がいる。全盛期より数は減ったが、残った連中は俺に力を貸してくれると契約した。その中から適合率が近い四人に協力してもらえば、まあこんなものだ」


 男は息を呑む。


「さて」


 大輝は指を無作為に動かしながら唇の箸を持ち上げる。


「お前の正義が上か、俺の悪意が上か。ためそうじゃないか」


「うおおおおおおおおおお」


 二つの光が放たれる。

 男のエレメンタルカラーズは大輝のそれを徐々に押しつつあった。


「ふはははは、所詮は寄せ集めだったな」


「そうだな」


 男はその声を、至近距離で聞いていただろう。

 人間を超えた身体能力で移動した大輝が、男の横に立っていた。


「ま、待て!」


 そう言うが、遅かった。

 大輝の手は、男のスキルを奪い取っていた。

 勝敗は決した。


「……最近影薄いんだよなあ。こう、ベジータが仲間になった後の天津飯みたいな」


 大輝はぼやき、男を気絶させると、再び敵の大量殲滅に移行した。



第五話 完



次回『剣に生き、剣に死ぬ』

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